第8回Salon de 修猷の報告(平成26年9月20日開催)

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『愛すべき、博多の食文化』


ゲスト: 写真左から    
緒方大助さん  らでぃっしゅぼーや株式会社会長 (昭和54年卒) 
吉田貞信さん
九州の野菜・食材の宅配サービス
「mamagocoro」プロデューサー
(平成7年卒)
進行役: 竹本 エリ
ルクルーゼ・ジャポン 
マーケティングディレクター・野菜ソムリエ

(昭和62年卒)

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【最近の九州のやさい】

まず第1部は、ゲストそれぞれの方野菜の宅配ビジネスに携わるようになった経緯を自己紹介を兼ねて説明いただきました。
 そして、昨今耳にするようになりました、進行役竹本も取得しています「野菜ソムリエ」いう資格についてのご意見もききました。

○竹本 : 私も仕事柄、この野菜ソムリエの資格を最近取ったんですが、最近、決して安くはない受講料を払ってまで、この資格を取る方が増えているそうです。緒方さんは、野菜ソムリエ協会の理事長もご存知でいらっしゃるとお聞きしましたが、なぜ野菜に資格を取る方が増えているんでしょうか?

○緒方氏 : もともとはおばあちゃんや親から子供に、野菜の美味しい食べ方、「知の伝承」をしていっていたものだったのが、核家族化が進んでいったり、地域のコミュニティーが希薄化する中で失われていった結果。それでも、家族に良いものを食べさせたいという思いを持つ人などが、あえて勉強する場として、知恵を売るビジネスが盛んになってきているという背景があるのだと思います。

○竹本 : 吉田さんはさきほど、「震災以降、九州の野菜に注目が集まっている」というお話でしたが、その点はいかがでしょうか?

○吉田氏 : はい、ただ、震災は本当に突発的なものであって、もともと九州は海も山の川もあって、資源が豊富な土地だったのと、最近の地方を応援しようという世の中の流れも相まって評価されているのだと思います。

○竹本 : 最近福岡に帰りますと、糸島の野菜が大々的にフィーチャーされていることに驚きます。特にこちらの(スライド写真)伊都菜彩(直販市場)は週末ごとに車の行列が絶えないといった具合に成功しています。
 実は、皆様、もうご覧になったかと思いますが、皆様の目の前にございます。本日のお料理は福岡の野菜が使われています。その野菜の現物をおもちしておりますので、JA共済の中川さん(昭和62年卒)よりご説明いただきましょう。

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○中川 : 博多 長茄子は、柔らかく甘いのが特徴で、あくが少ないため切ってすぐに使えます。
 次に、とよみつ姫は、いちじくの名前で、糖度がたいへん高く、カルシウムも豊富です。
 いちじくというのは、福岡は全国で実は第3位になるほどの実力なので、JAでも絶賛PR中なんです。

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【当日のランチメニューのご紹介】

「博多長茄子のマリネとキノコのサラダ

若鶏のコンフィとよみつ姫と赤大根添え

おたのしみ

パン&コーヒー

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○竹本 : 実は、修猷館の卒業生で糸島のさきで農業を営んでいる方がいらっしゃいます。(映像)この方なんですが、光安慶吾さん、平成9年に卒業後、九大の法学部に進んで、東京に就職するも、一念発起をして糸島にて農業を始められたのだそうで、われわれ取材に行ってまいりました。 そのVTRをどうぞご覧ください。

* 光安氏 : 糸島にて農業を営んでおります光安慶吾と申します。農業はトマトを栽培でしおり、「ごほうび」という日持ちのする硬くて甘い品種です。
 今、農業には若い人が少ないという現状をなんとかしたいと思って、農業を始めました。ぜひ、若い人が作った野菜をみかけることがございましたら、応援よろしくお願いします」

○竹本 : すごく真面目で誠実そうな青年で、ただいまお嫁さんを大募集中とのことですので、どなたか良い方をご存知でしたら、ぜひご紹介お願いいたします。ところで、吉田さんは実際現場をご覧になって、どう思われましたか?

○吉田氏 : 彼もすごく苦労して農業を続けているのが伝わってくるんですが、実際農業はなまはんかなものではありません。国策自体も以前と今では内容が変化しています。個人的に思っているのは、味というあいまいで感性的なものと、栽培という化学的なものと、ビジネスというものとが成立していかなければならない点が、すごくクリエイター的な要素をもっている人材が活躍していかなきゃいけない産業なんじゃないかと思っています」

○竹本 : ところで、福岡の野菜というえば代表的なものに「かつお菜」がありますが、これに関して緒方さんがどうしても言いたいことがおありだとか・・

○緒方氏 : 僕はお雑煮がとてもすきなんですが、最近はあごだしも東京でだいぶん手に入るようになってきましたが、このかつお菜だけはなかなか手にはいらないんで、自分の会社でもやってはいるんですが、供給が安定しない。なので、かつお菜のシーズンになったら、福岡より大量に送ってもらって下ゆでをして全部ラップでくるんで冷凍してしまいます。そうすれば、夏でもお雑煮が食べれるようになりました」

○竹本 : あとはイチゴの「あまおう」ですね。香港や台湾にいくと、富裕層向けに2倍3倍の値段で流通しているそうです。あまおうって何の略か吉田さんご存知ですか?

○吉田氏 : はい、「あまい、まるい、大きいうまい」でしたっけ?

○竹本 : さすが!でも「あ」は「赤い」なんですよ。(笑) もう、日本一といっても良さそうですね

○吉田氏 : そうですね、ブランドとしても定着してきていて、東京でも2.3倍の値段がついています。

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○竹本 : さて、緒方さんは最近伝統野菜の研究をされていらっしゃるとか?

○緒方氏 : らでぃっしゅぼーやでは2001年から、日本でどんどん種が消えていく伝統野菜を種から復活させて栽培から販売をしているんです。昭和30年代くらいまでは、だいこんでも30種類は売っていたんです。それが、今では1か2種類程度です。これは、流通や栽培をしているつくり手側の都合でそうなってしまっているんでが、食べることは文化そのものなので、伝統野菜に携わっているのは、例えば、にんじんでも、ただのにんじんといわずに「黒田5寸」と言ったり、だいこんでも「亀戸だいこん」や「三浦だいこん」だったりといろんなだいこんがあるってことを知っていただくということが、やはり食文化を継承していくことにもなりますので、これは、研究というより社会活動みたいなものです。まったく儲かりません(笑)

○竹本 : そういえば、緒方さんといえば、先日民主党の細野議員と対談なさってましたが、どういった内容だったんでしょうか

○緒方氏 : たまたまこの時期に中国のチキンナゲットのニュースがあった頃で、「食の安全」について意見を聞かれました。でも、思い出していただければ数年前、北海道でも似たようなことがありました。こういう問題は中国にかぎらず起こっているんですが、日本は世界的に見ても食べ物が安いんです。やはり、安すぎるものにはワケがある。安さっていうものを追求しすぎると、やはりこちら側(消費者側)でも、どこかリスクを負うことになるということです。

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○竹本 : やはり、そのうちしっぺ返しが来るということでしょうね

○緒方氏 : はい、安すぎるものや、特に生き物の形を失っているものというのは、作為が入る余地があるということですから、ご注意されてお選びになった方が良いと思います。

○竹本 : ちなみにここ数年、有機野菜とかオーガニックとかがよく言われていますが、緒方さん、これはそもそもどういうことなんでしょうか

○緒方氏 : もともとは、1964年レイチェル・カーソンという人が「サイレントスプリング」(沈黙の春)という本を出されて、そこから欧米で環境問題が言われるようになりました。いわゆる、農薬などの化学的なものが土壌を汚染し、環境を破壊するんじゃないか?ということから、有機農業運動というのが起こりました。日本では、有機野菜といえば、「安全や安心」といったパーソナル(個人的な)問題と思われがちですが、そもそものスタートは非常にパブリックな(公的な)問題であり、地球環境を持続可能なものにしていくために、持続可能な農業をやっていきましょうという、もともと環境運動みたいなものから始まっているんです。

○竹本 : では、有機だからイコール体に良いというのとは、少しニュアンスが違うんですね。

○緒方氏 : はい、たとえば、有機肥料といえば牛糞や鶏糞を使用します。でも、この熟成のさせ方を一歩間違うと、とても有害なものになってしまうんです。それから、有機野菜だから美味しいというわけではなく、美味しく作る技術はまた別の技術が必要なんです。






【博多の食文化の進化】

第2部は、ではテーマを博多の食文化へと拡大。博多の思い出の料理について、会場の皆様にマイクが回されました。挙がったのは「おきうと」、「お雑煮」、「ラーメン」でしたが、最後に「うどん」が出てきました。

○吉田氏 : ままごころでも、おきうとは時々あつかうんですが、すごく限られた地域でしか食べないようですので、逆に守っていきたいなと思います。

○竹本 : 昔はリヤカーでの「おきうと売り」というのがいたそうで、箱崎?西新まで売り歩いていたそうです。
それから、「柚子故障」なんかもありますね。吉田さんはどう思われますか?

○吉田氏 : 食材もそうなんですが、博多のお醤油なんかも新しい味として紹介していきたいと思っています。

○竹本 : 前半は、お野菜のお話でしたが、最近「食育」などとよく耳にしますが、緒方さんのお考えをお聞かせください。

○緒方氏 : 今は食育基本法というのが出来て、流行みたいなものですが、本来の食育というのは、食事を通じて人間形成に役にたつような方向が良いと思います。やはり、食べ物って、水と塩以外はもともと生き物だったものです。他の命をいただいてわれわれは生きているのだという根源的な事を、きちっと知るということがとても大事なんじゃないかと思います。

○竹本 : ええ、それでは、ここで会場の皆様から、思い出の、または好きな博多のお料理をうかがってみましょう。

* お子様連れのお母様 : 「やっぱり、おきうとがなつかしいので、子供にも食べさせたいです。」

* お子様 : 「博多ラーメン」

* 女性 : 「博多のお雑煮が好きです。こちらでかつお菜をくださいと言ったら、八百屋さんに何それ?といわれました」

* 61年卒女性 : 「やはり、焼き鳥です」

* 54年卒男性 : 「やはり博多うどんです。先週博多に帰って、時間の無い中、うどんだけは食べて帰りたいと思いかけこみました。」

○竹本 : 実は、博多はうどんの発祥の地ってご存知でしたか?香川県がそうだと言っていますが、実際にはうどん店も香川県に比べると、博多の方が600軒以上もうわまわるほど軒数も多いんです。

(ここで「おたのしみ」メニューの博多うどんが登場しました)

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 ええ、今お配りしておりますが、実は本日みなさまに是非食べていただい懐かしい博多うどんでございます。もちろん「ごぼ天うどん」です。東京ではなかなか食べられませんよ。(会場拍手喝采)

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○竹本 : こちらの博多うどんといえば重要なのが出汁ですが、福岡の丸三食品の出汁を使っています。丸三食品は非常に歴史のある出汁のメーカーなんですが、こちらの前田社長も修猷館(昭和34年の)卒業生、柔道部出身でいらっしゃって、今回の企画に賛同いただきまして、喜んでご提供いただきました。
 前田社長は未だに出汁の開発に努めていらっしゃり、今回のお出汁に関しては、開発したてで、まだ市場に出回っていません。こちらに使われている原材料が、お魚だけでも、なんと50種類以上もあり、例えば出汁昆布をとっても汚染されていないもの、お野菜も10年以上完全無農薬というこだわりです。丸三食品の信条が「食べ物とは生き物のこと、美味しさとは生き物の生命力そのもの、私どもはその生命をいかに無駄にせず、お客様の体に取り込んでいただくかを考えています」と。
 それから、麺おほうなんですが、今回は伊都菜彩で人気の「まるいとうどん」を使用しています。100%糸島産小麦を使った、もちろん柔らかめでございます。そもそも何故、博多うどんが柔らかいかご存知ですか?

○吉田氏 : 博多の人はせっかちなんで、あらかじめ茹でていたそうですよ。

○竹本 : 博多の人は待つのが嫌いですものね。それでは終盤になってまいりましたが、最後に紹介したい方がいます。本日のこの素晴らしいお料理を作っていただいたシェフ、大坂シェフでいらっしゃいます!
昭和58年生まれで、もともとフレンチのシェフでいらっしゃいます。そんなフレンチのシェフに今回むちゃなお願いをさせていただきましたが、ご快諾いただき実現しました。

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○竹本 : では最後に緒方さん

○緒方氏 : やはり、食べるということの本質的な意味を知るとより美味しくなると思いますので、多くの人に知ってほしいです。それから、カルチャー(文化)の語源は、カルティベイト(耕す)からきています。ですから、農業(アグリカルチャー)と文化(カルチャー)とは切っても切れない関係にあると思います。なので、われわれが、農業と文化を日本人として、また地域人として、どれだけ大事にしていけるかが、結果的に国際人になっていけるのだと思います。ですから、できるだけ、そういうことを後世に伝えていきたいなと思っています。

○竹本 : そうですね、吉田さんはいかがですか?

○吉田氏 : 博多に限らず、各土地に根付いた文化という物を、自分自身も大事にしていきたいなと思いますし、そして、そういう人が増えていってほしいなと思っています。

お腹も心もまんぷくになった皆様、最後にお土産をお持ち帰りいただきました。

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【当日のお土産】

「ままごころ」より 佐賀の唐津のサトイモ 佐賀白石町のレンコン

「丸三食品」より出汁の素 

「ジョーキュウ醤油」より博多醤油 

がめ煮レシピ

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その後、多くの方が「がめ煮」を作ってフェイスブック(インターネットのコミュニティサイト)に投稿し、「がめ煮」の輪が拡がりました。
博多の食文化はやっぱり素晴らしい!博多、万歳!

みなさんの笑顔とともに、懐かしいお料理をいただきながら、遠い故郷に思いをはせた... そんな和やかな秋の土曜の午後でした

この企画を持ちまして、私ども昭和62年卒無二の会の幹事学年としての、全ての行事を無事終えることが出来ました。執行部を始め多くの皆様のご協力に深く感謝申し上げます。ありがとうございました。

内村 直生(昭和62年卒 無二の会)