第12回 Salon de 修猷の報告(平成30年9月8日開催)


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『人生100年時代をどう生きるか?』

 第12回を迎えた今回の Salon de 修猷は、『人生100年時代をどう生きるか?』と題し、9月8日に開催されました。昼食をはさんだ二部構成とし、第一部はWEBメディアの最前線でご活躍の米田智彦さん(平成3年卒)に「新しい時代の生き方と働き方」について講演をいただきました。第二部は本業はフリーランスの映像プロデューサーで、気功・太極拳のインストラクターでもある清水御冬さん(平成元年卒)に「不老長寿のカラダ作り」と題し、簡単なカラダのセルフケア方法や着席したままでもできる気功・太極拳のポーズなどご紹介いただきました。

【第一部:講師:米田智彦さん(平成3年卒)】

「新しい時代の生き方と働き方」VUCA(バッカ)の時代に多面体で生きていく

 私は、2010年末、『シェア<共有>からビジネスを生み出す新戦略』(レイチェル・ボッツマン他2名著)という一冊の本に出会いました。これが人生の転機となります。モノのリサイクル、リユースにはじまり、車や工具から空間などのシェアまで、インターネットとソーシャルネットワークによって、かつてない多様なシェアビジネスの到来を感じたのです。それから約8年後の今、UBER、メルカリ、airbnbなどが、世界を席巻するシュアリングエコノミー企業に成長しているのをみると、そのころの未来の予感は当たっていたようですね。まさに、今は、所有することから、シェア<共有>し、利用することへ世界は移りかわり、共有型社会となっています。
 そのシェア<共有>という言葉に、私はインスピレーションを得ました。脳裏に「人生最後のバックパック旅行は東京だった」というフレーズが降りてきたのもこの頃です。
 そして、そのフレーズを実現すべく、2011年1月から約1年間、東京の東から西まで、昼間は出版社、カフェ、シェアオフィスで仕事をしながら、家財と定住所を持たずに東京という都市をシェアしながら旅するように暮らす生活実験「ノマド・トーキョー プロジェクト」を実施し、偶然のなかの幸運=セレンビリティを呼び寄せる旅というものを体感しました。ソーシャルとリアルを掛け合わせると予期せぬことが毎日起こることを感じたのです。
 ハットに黒いトランクというスタイルで東京中を移動し、Twitterに「今夜泊めてくれる人、募集 #nomadotokyo」と書き込み、それに応えてくれる人の個人宅、ゲストハウス、シェアハウスなど都内100か所で寝泊まりしていた当時の私の姿は、あたかも「21世紀のリアル寅さん!」のようでした。
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また、その後に編集長を務めた「ライフハッカー」の企画では、東京から地方や世界に目を転じ、国内外の移住特集を組み、様々な人と交流しました。2015年に福岡を取り上げた際には、高島福岡市長へのインタビューも実施し、取材を通じて福岡の良さを改めて感じていました。本当に、福岡は、世界の大都市にも肩を並べられるほど素敵な都市だと思います。日本のサンフランシスコのように感じたこともあったほどです。
 それら、いろいろな企画・プロデュース・取材・編集等の変遷を経て、新しい時代のメディアを表現するために「FINDERS」を2018年4月に創刊、現在に至ります。
 そんな私が、現在という時代について考えてみますと、まず目につくのは、働き方改革という国家目標と、新しい働き方というムーブメントにより変化した仕事環境です。「20世紀前半:産業の時代」→「20世紀後半:情報の時代」→「21世紀:アイデアの時代」に徐々に移りかわるとともに、スマホによって、これまでのスキマ時間は単なるスキマではなくなっていまいました。モノやサービスを買っているようで、実は時間短縮を買っているような時代が到来していることに私達は気づかされます。
 この時間主義により、スキマ時間を有効活用しようと人々は必死になり、その中でも特に真面目な努力家が多いホワイトカラーの人々の場合は、やらなければならないことで埋まっていく状況をより一層生み出しているようにみえます。時間効率主義のはずが、労働時間が減らない一方、自由になる時間も増えないのです。誰もがそのような矛盾を抱えながら暮らしている時代の中で、私は、こんな時代だからこそ遊びの時間の重要性を伝えようと思い、遊びと仕事の融合を念頭に、もので表現することを試みてみました。それが、こちらです。
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salon12_05.jpg OLが昼休みにトイレで寝ているらしいという情報をヒントに、究極の孤独を味わえる快適な書斎を創造してみたのです。便座を12面体で囲って作成した移動型モバイル・トイレ型書斎のアイデアを思いつき、大手企業や空間デザイナーと組んで出展したものです。お神輿で担ぐこともできますし、虎ノ門のマッカーサー道路を滑走した実績もある奇想天外かつエコなアート作品です。自ら作り出し面白がって創造し、情熱をもって、真面目に企画することで完成した遊びと仕事の融合作の一例です。
 これからの時代、仕事とプライベートとの境界線が溶けていく、そして、オフィスでなくても、スマホによって、どこでもオフィス化することが、ますます可能となっていきます。それこそ、トイレさえも、オフィスになりうるのです。また、SNSで誰とでも出会えるのです。その出会いをブーストさせ、大きな出会いにしていく、その好循環を生み出すことが大切なのだと思います。補足すると、今日のこの講演会登壇の依頼が、私のところに舞い込んだきっかけもFacebookでした。
 こういった人と人との素敵な出会いや、好循環を生み出すには、自らの創造力を働かせ、夢中になるほどの情熱をもつことだと思います。「Don't dream it,Be it.」夢は見てもかなわない、夢の中にいること、すなわち夢中であることです。ミハイ・チクセントミハイ(アメリカの心理学者)が提唱しているフロー概念の、いわばフローな状態が特に重要なのだと思います。
 人生100年時代を生きるとは、まさに、情熱をもって、いつも夢中になるようなものを見つけ、何度も新しい人生を生きることではなないでしょうか?
 昨今、ベーシックインカムの導入により、遊びと仕事の境界線があいまいになり、好きを極めることが重要になってきています。リンダ・グラットン著『ライフシフト』にも紹介されていましたように、ポートフォリオワーカーとして、副業ではなく、複業としていろいろな人生を生きていくようになるでしょう。
 だからこそ、楽しめたり、夢中になれるものを探して、VUCA(Volatility(変動)、Uncertainty(不確実)、Complexity(複雑)、Ambiguity(曖昧))な予測困難なバッカ時代に、強靭な人生を送れるように、多面体で生きていきましょう。やり遂げるパッション、情熱を忘れなければ、計画通りじゃなくてもよいと思います。私自身、まだまだ挑戦していきます。生け花の師範も実は目指しているのですよ。皆さまも、楽しく、しなやかに、人生100年時代を臨機応変に生きて参りましょう。
 ご清聴ありがとうございました。

<サロン・ド・修猷 担当者より>
 米田さんのメッセージに、情熱を持ち続けられる何かをはじめなきゃ、と刺激を受けた方が多かった様子で、皆さん、活き活きとした瞳で最後まで聞き入っておられました。
 また、米田さんのサイン入り著書プレゼント(3冊)には、希望者が我も我もと手を挙げ、最後は争奪戦が繰り広げられたところで、終演となりました。

【第二部:講師:清水 御冬さん(平成元年卒)】

「不老長寿のカラダ作り」100歳まで健康でいられる体をつくるために、実践しながら学ぶ

 私たち社会人はあまりに体のことをおろそかにしがちです。Facebookで友人たちが風邪を引いたという書き込みを見るたびにいつも「太極拳しようよ」とついつい思ってしまいます。太極拳との出会いは中学の時です。その時習った「太極拳は円運動」という言葉が強く心に残っていました。その後社会人になってから再開し、以来風邪などを引くことがなくなりました。人生100年を健康に過ごすためには、まず下半身を鍛えることです。老いは下半身からやってきます。下半身には大きな筋肉が集まっていますが、きちんと鍛えないとみるみる衰えていく筋肉でもあります。ですから足腰と体幹の鍛錬が重要になってきます。
 特に鍛えるべきは、大腿四頭筋、大臀筋、インナーマッスルです。これらが歩行と姿勢を保つ筋肉ですが、弱ってくると足が前に出なくなっていくため、少しの段差で躓きやすくなってしまいます。足を骨折して入院などしてしまうと余計に筋肉が落ちる、よって、また骨折し、寝たきりへ、という悪循環につながります。
 足腰を鍛えるのに一番いいのは、スクワットです。特に太極拳はずっと中腰姿勢で動き続けるので、ずっとスクワットをしているようなものです。筋力は年齢に関係なく鍛えればアップするので、ぜひ実践してみてください。
 もう一つ大事なのは、「気」です。「気」は一言でいうと、生命のエネルギーのようなものです。元気、病気、陽気、気が合わない等の言葉でもあるように、日本人は、「気」にもとから敏感な民族です。
 「気」はだれもが持っているエネルギーで、陰だったり、陽だったり、強い、弱い、人それぞれありますが、実は自分自身で整えていくことができます。
 私はハワイで生活していた頃、リラックスの訓練をしていたのですが、ある日突然体の中を何かがサーッと流れたのを感じました。実はそれが「気」の流れであり、肺経というものだったということを後から知りました。太極拳を修練するにつれ、「気」というものをよりはっきりと感じるようになりました。
 それでは、ここから、実践で皆さんと一緒にやってみましょう。「気」は経絡という通り道を通っていて、陰と陽の経絡を交互に流れていきます。
 経絡上に経穴というポイントがあり、一般的に、これがツボと言われているものです。これはエネルギースポットだったり、「気」が滞るところです。よって、ツボを押すと、体調がよくなったり、または体調不良を未然に防ぐことができます。
 代表的なツボを紹介します。百会(ひゃくえ)は、頭のてっぺんにあります。柔らかく3秒で押して、息を吐きながらゆっくり吐きましょう。その後、時計回りに回します。「気」が百会から入ってきて、最後、足の湧泉(ゆうせん)にまで流れるのをイメージしてみましょう。大地からパワーを取り込み、頭から入れていくイメージです。そして湧泉へ。この天から地への流れが基本となります。
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 次に風池(ふうち)というツボを3秒押してみましょう。「気」の入り道となっており、邪気も入ってきてしまいますので、風邪の引きかけは冷たくなったりします。手の平で温めてツボをおすと、邪気も防止できますし、温めることで風邪の予防にもなります。肩井(けんせい)は肩こりに効果がありますし、関元(かんげん)は胃のもたれに効きます。いろいろなツボがあり、本日は資料もご用意していますので、ぜひご自宅でも実践してみてください。
 最後に、単鞭(たんびえん)の披露をします。太極拳は陰と陽をずっと繰り返しながら動いていきます。
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 本日はご清聴いただきありがとうございました。

<サロン・ド・修猷 担当者より>
 清水さんの講演は、従来のサロンにない動きのある、そして実践的な内容で、参加者の方も新鮮に感じてくださったようです。これを機に皆さんがご自身の体のケアを日ごろから意識され、人生100年時代をますます健康でご活躍いただけるきっかけとなれば幸いです。この報告の最後に当日の資料を掲載致しましたので、ご活用頂けましたら嬉しく思います。
 当日は、福岡より『ふくや』の辛子明太子と辛子高菜をお取り寄せし、お代わり用の炊き立てご飯もご用意して皆さまをおもてなししました。
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 はじめてサロンに参加してみたけどとても楽しかった、というお声をたくさんいただき、幹事としても感無量でした。
 来年のサロン・ド・修猷も学士会館にて9月7日に開催されます。皆さま奮ってご参加くださいませ。

平成3年卒 讃猷会 サロン担当 幹事: 森 滋子、白石 順子

【第二部:配布資料】 salon12_08.jpg salon12_09.jpg salon12_10.jpg salon12_11.jpg salon12_12.jpg salon12_13.jpg