第660回二木会講演会記録

「現代の健康課題と脳疲労〜マインドフルネスから読み解く~」

講師:松尾伊津香さん(平成18年卒)
開催日時:令和3年12月9日(木) 19:00-20:00

〇坂井 本日の二木会は、平成18年ご卒業の松尾伊津香(まつおいつか)さんに「現代の健康課題と脳疲労~マインドフルネスから読み解く~」と題しましてご講演いただきます。
 松尾さんは関西学院大学文学部総合心理科学科にて、心理学・精神医学を学ばれ、ヨガ・瞑想インストラクター、ダイエットジムの店長やスーパーバイザー等を経て、2017年に設立に関わられた日本初の疲労回復専用ジムZERO GYMのプログラムディレクターに就任されています。また2019年からは、一般社団法人ライフメディテーション協会の代表理事も兼任されています。今日の講演でご紹介いただけると思いますが、『一生太らない魔法の食欲鎮静術』など、著書も多数執筆されています。
 ご講演の前に、平成17年卒業の福島様より講師の紹介をしていただきます。

■講師紹介

〇福島 平成17年卒の福島健史と申します。私と松尾伊津香さんとの接点は運動会でした。私が青ブロック長をしていた時に、二年生の松尾さんが作業に来てくれていました。松尾さんは文系英数クラスに所属して授業が忙しかったにもかかわらず、毎日来てくれ、一緒に運動会をつくっていった思い出深い仲間です。彼女はとにかく真っすぐで、やると決めたことはやり遂げる性格です。その性格で、今、ここにいらっしゃるわけですが、関西学院大学を卒業する前に就活をしながら、このまま普通の社会人になってもどこかで辞めてしまうのではないかと考え、その頃に食や心や体を専門とする、今に続く彼女のキャリアが動き始めたのです。そして彼女は突如としてヨガのスタジオの門戸をたたき、アルバイトを始め、そしてアメリカ留学をし、帰国後は本を執筆されたりして現在に至っています。今日のテーマである脳疲労についても、マインドフルネスを使って、世のため人のためにいろいろな発信をされているところです。
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  今日のテーマは脳疲労ですが、私も弁護士として大量の情報を常に浴びていて、一日が終わると脳がくたくたになっています。その処方箋は二つかなと思っています。一つは、修猷の仲間と会って飲んで遊び、「いつまでも変わらんね」という話をすることです。もう一つは、自分で自分のケアをするということです。今日は、まさにその一つを松尾さんにお話しいただきます。

■松尾氏講演

〇松尾 最初に言っておきます。緊張しています。カメラの前でお話しする機会はたまにあるのですが、私の人生で今が一番緊張しています。なぜなら、私の後ろにこの六光星があるからだと思います。これは光栄なことでもありますが、なかなか想像できなかったことなので、緊張しています。
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  今日は脳疲労がテーマです。私の今の活動の主軸はマインドフルネスとか瞑想とか言われているものです。これが医学的なものとして、また一般的に自分の疲れの緩和として、あるいは最近はビジネススキルとして取り上げられていますので、その辺りをお話しします。

■自己紹介

 私は、大学3年生の時から就活には違和感があって、ヨガスタジオに乗り込みました。経験は全くなかったのですが、インターン代わりにヨガスタジオで働き始め、そのままそのヨガスタジオに勤めました。
 この道に入ったのは、修猷館で、何の授業だったかは覚えていないのですが、40代の男性の自殺率が一番高いということを知ったことがきっかけでした。高校時代の私には、それがとても不思議でした。私にとって40代の男性は、キャリアも積んでまだまだ体力も気力もあり、家族もいて、こんな豊かな日本でどうして自殺するまでのストレスがあるのかが理解できず、それで心理学科に進んだという経緯があります。
 臨床心理士になろうと、うつ病患者さんについて学んでいた時に、瞑想とかヨガで心を整えるという方法を知りました。私は勉強が苦手でしたので、この後2年間の大学院で学問として研究するよりも現場でお客様の健康に携われる道がいいと、すぐにヨガインストラクターとして働き始めたのがキャリアのスタートです。
 ヨガをしていると、本当に心と体がつながっていることを目の当たりにしました。最初はふさぎ込んでいたり、落ち込んでしまっている方が、体を動かして体と心を整えていくことで、前を見ることができるようになったり、明るくなっていくのを見て、本当に心と体はつながっているのだと実感しました。そしてそれなら、体についてもう一歩深く学んでいきたいと、体の専門家としてダイエットトレーナーに転身しました。私は、高校は茶道部、中学は帰宅部で、大学は大学祭実行委員会という超文科系でしたが、当時、ダイエットで体を劇的に変えるというのがはやっていて、そこに入れば体のことを学べるのではないかと考え、女性専門のダイエットのジムに入りました。
 筋トレと食事制限で体を変えていくことを学びながら、少しおかしいと気づいたのが食欲の問題です。もともと心に興味があったからか、食欲のコントロールについて疑問が芽生え、それがその後の食欲鎮静術につながります。痩せたい女性に「食べちゃ駄目」としか言えない現場でとても悩み、それまで学んできた瞑想やヨガと併せて、きちんとした食事で満足する気持ちや、そのプロセスを大事にすることで解決できるかもしれないと考えました。それがその後の食事瞑想につながり、今の活動のきっかけになっています。
 私は28歳の時に、ベスト・ボディー・ジャパンという大会に出場しました。その当時、食事瞑想のことを広く伝えるために本を書こうとしたのですが、何の実績もない人に本は書けないと言われました。それなら、何かの大会で1位を取ったら実績になるはずだと思って出場したのですが、結果的には3位でした。実績になったかどうかは微妙ですが、それを経た末に本を出しました。今、ダイエットに悩まれている方がいらっしゃったら、ぜひ読んでみてください。満腹ではなく満足という食べ方をつくることで、幸せなダイエットを叶えていきましょうという本です。

■疲労回復専用ジム ZERO GYM

 その本の出版から、今、メインで活動しているZERO GYMを立ち上げるに至ります。私の本の出版社はビジネス書の会社でしたが、そこの社長が、出版業以外にも、ビジネスパーソンのために体や心を整えるリアルな場所が提供できないかと考えており、一緒にやれる人を探していたのです。その時に、体のダイエットトレーナーとして活動しながらも、もともと心理学科だった私の経歴を見てくださり、一緒にやらないかとなって、このZERO GYMを立ち上げました。今は、千駄ヶ谷店と新宿店と、あとはブラジルのサンパウロに3店目があります。
 数年前は、マインドフルネスとか瞑想というのはまだ浸透率が低かったのですが、日経トレンディの「2018年のヒット予測100」の3位に選んでいただいて、そこから少しメディアに出させていただくようになりました。
 2019年には一般社団法人を立ち上げて、主な活動としてインストラクターの育成を進めています。このように、リアルな現場と、また知識や情報を本で伝えるということをメインで活動しています。
 それから、もしかしたら皆さんの中に同級生の方がいらっしゃるかもませんが、昭和51年卒の先輩で、藤井英雄先生という、精神科医でマインドフルネスをお伝えされている先生がいらっしゃいます。先生とは突然に連絡をさせていただいたにも関わらず、修猷館の後輩だからということでお話をさせていただき、今でもお世話になっています。

■仕事パフォーマンス

 今は、「寝ても疲れている」、「日中眠気がある」、「途中で起きる」、「集中力が続かない」、「イライラする」、「考え事が止まらない」、「ストレスを感じる」、「睡眠不足で悩んでいる」ということに一つぐらいは当てはまるライフスタイルになっているのではないでしょうか。
 そこで、コンディショニングが大切になってきます。会社や家庭で、いろいろなタスクがあると思いますが、それは「仕事のパフォーマンス=能力×コンディション」という式で成り立っています。例えば、30の能力をお持ちの方は、30のパフォーマンスを発揮できると考えがちですが、実はそこには大事な乗数のコンディションの「1」が隠れているのです。能力が上がった際も、この「1」が崩れなければ、そのままの値ですが、果たして、これが「1」のままキープできているかということです。せっかく能力を50にしたとしても、コンディションが0.8になっていたら、仕事のパフォーマンスは50にはなりません。
 ほとんどの方がコロナウイルスでテレワークを経験されていると思いますが、一番言われているのは、オンとオフの切り替えが難しいということです。そうすると、運動も十分ではなく日の光も当たっていないので、睡眠リズムが崩れやすくなっていて、結果的にコンディションが下がってしまうというようなことが起こりやすくなっています。
 私は、医者のような病気やけがを治すことではなく、コンディションが0.8の方を「1」にするお手伝いをしているのです。そのことを「アクティブヘルス」と呼んでいます。病気やけがの治療ではなく、もう一歩攻めたいい状態をつくるということで、最大限のパフォーマンスを発揮できるようなお手伝いをすることが私のミッションだと思っています。

■睡眠不足問題

 コンディショニングを見直すときに、まず大事なのは休息です。健康経営でセミナーに行くと、一番に上がってくるテーマは睡眠ですので、今日は睡眠不足からお話ししていきます。
 睡眠不足になると、まず脳機能が低下し、判断力、集中力が低下します。それは、頭の中にグルコースという栄養源がうまく届かなくなってしまっているのです。特に、理性的なものをつかさどる前頭前皮質に糖分が届かなくなってしまうので、脳機能が低下してしまいます。最近は少なくなったと思いますが、徹夜での仕事などは結果的には生産性を下げてしまっているのです。今は短時間でいかに生産性を上げるかという時代になっていますので、まずはしっかりと休息を取ることが大事です。
 そしてもう一つ、睡眠不足だと、ストレスをキャッチする扁桃体という部分が反応しやすくなります。この部分が活性化するとイライラや不安などが起こりやすくなったり、感情の起伏が激しくなったりします。睡眠不足によりこの扁桃体が活性化することで、ビジネスで必要な対処や判断能力を狂わせる原因になります。これは脳機能として解明されています。
 睡眠スコアを数字で見ると、日本人は群を抜いて悪い状態です。GDPに占める睡眠負債は、アメリカを抜いて日本が世界最下位で、経済損失で計算すると15兆円に上るといわれています。
 睡眠時間と生産性の関係について、アリゾナ大学の研究によると、5時間以下の睡眠の人は、7~8時間寝ている人に比べると、仕事の効率が3割ぐらい下がるそうです。人によってベストな睡眠時間は違いますが、6時間は切らないように眠るというのが一つの目安です。他にも、睡眠時間が16分短くなると、集中力と仕事のパフォーマンスが25%低下するという南フロリダ大学の報告や、不足で仕事のエラー率が15倍上がるというウィスコンシン大学の研究結果があります。さらにもう一つ、面白い研究結果をご紹介します。中程度の不眠症に悩む人の生産性は、普通に寝ている人に比べて107%低下するそうです。100を超えているのは、自分の生産性だけではなくて、他の人の生産性も下げるからだそうです。このように睡眠不足は周りの人の生産性にも影響を与えることから、最近は企業様からのお問い合わせも睡眠不足の改善に関するものが一番多いです。
 睡眠不足は、自律神経に関係しています。これは私たちの一日の体内のバイオリズムをつかさどってくれているもので、無意識に働いてくれています。交感神経と副交感神経の2種類があり、お互いがシーソーのような感じで動いています。お昼は交感神経が働いて緊張や興奮をもたらし、夜は副交感神経が優位になることでリラックスするといったように、バランスを保ちながら動いています。睡眠がうまく行かないときは、本来副交感神経が優位になる時間帯に交感神経の働きが高まり、リラックスしにくくなっていることに起因します。
 このような自律神経の乱れは、ストレスによる慢性的な緊張状態が原因です。ストレスと言っても様々な種類があります。よく言われるのは「運動不足」、「人間関係」、「不安・恐怖」ですが、これらは体と心のストレスで、これらは従来から言われているものです。これに加えて、最近は現代に特有のストレスが出現してきました。それが今日のテーマである脳疲労に関係してくる「情報過多」、「SNS」、「マルチタスク」等です。あるIT企業の調査で、2000年から2020年の20年間で、私たちが受け取る情報量は1万倍に増えたというデータもあります。それだけ急激に脳が情報を受け取っているので、私たちが気づかないうちに脳は疲弊しています。

■マルチタスクが脳に与える影響

 最近、脳の可塑性と言われて注目されていますが、脳というのは生まれてそのまま固定されるわけではなくて、変化するらしいです。そしてそれは、いい方向にも変化すれば、よくない方向にも変化します。マルチタスクを続けていると、集中力の低下や、鬱(うつ)とか不安感などの精神的なトラブルを招く可能性が高まり、帯状皮質(認知機能とか感情のコントロール機能に重要な役割を果たす領域)と呼ばれる脳の一部の灰白質密度が低下してしまうと言われています。
 日々皆さんはメールチェックをされていると思いますが、このメールチェックを1日3回に制限した場合、ストレスが緩和され、幸福感が上がったそうです。逆に制限をしなかった場合は、ストレスが増えて生産性が低下したそうです。マルチタスクの負荷が高いものと低いもので比べた結果、負荷が高いもののほうがコルチゾールという唾液に入っているストレスホルモンの値が増えたそうです。マルチタスク状態で作業をする場合のほうが20%から40%ほど作業効率が落ちるという結果が出ています。
 ただ、そのマルチタスクをやめるというのは、今は現実的ではありません。シングルタスクに切り替えるやり方もありますが、今日これからやっていくマインドフルネスとか瞑想で、呼吸や体の感覚を一つのものに集中してあげて、マルチタスクの脳を1回リセットして、ストレス緩和をしていきましょう、ということが本日の本題になります。

■マインドフルネスとは

 医学的には、「マインドフルネス・ストレス低減療法」という名前が付いています。この療法を考案したジョン・カバット・ジン先生の最初の目的は、痛みに対する精神的苦痛を取り除きたいということでした。患者さんは痛くて当たり前なのですが、治療のストレスに対する過敏な反応や過度なフォーカス状態を緩和できないかということでつくったのが最初です。そして、これは脳にポジティブな影響があっていいということで一般的に広まることになりました。
 『ランセット』という医学雑誌に載っていたものから一つご紹介します。うつ病患者さんに、従来の抗うつ薬治療と、マインドフルネス治療を2年間行い両者の再発率を比べてみたところ、再発率が44%と47%と出て、有意差が見られなかったということです。マインドフルネス療法が薬と同じだけの力を持っているという研究結果でした。薬は体への負担や副作用がありますので、マインドフルネス治療が有効であれば、これは大きな一歩です。
 次に、私が去年驚いたのですが、国連のコロナウイルスに関する特設ページに、不安になったらこんなことをしましょうという9カ条が載っています。その7番目に「マインドフルネスをしましょう」と明記されていました。ヨガではなく「マインドフルネス」としっかりと書かれていました。
 マインドフルネスで脳がどう変わるかについてですが、一つ目は、ストレスを緩和させてくれる力が強いということが認められています。マインドフルネスを実施すると、ストレスに反応する扁桃体が鎮静化されることが分かりました。もう一つは、記憶力をつかさどる海馬が活性化されるということも認められています。
 また、「緊急事態でも冷静に状況を把握し、適切な判断が下せる能力の向上が期待できる」というのが認められていて、これは一つのポイントです。2018年に、タイの洞窟に閉じ込められた男の子たちのニュースがありましたが、その時に、普段からマインドフルネスで脳をトレーニングしていたから正しい判断ができて生き延びることができたということが報道されていました。
 もう一つが、「集中力の向上が期待できる」です。マルチタスクで集中力が低下しやすくなり、集中力を上げたいという相談でジムに来られる方が多いのですが、実際に向上が期待できます。
 ところで、そもそもマインドフルネスとはどんな状態なのでしょうか。マインドフルネス瞑想をされたことがありますでしょうか。学術的には、「今この瞬間の体験に意図的に意識を向け、評価をせずに、囚われの無い状態で、ただ観ること」と定義されています。マインドフルネスの状態とは目覚めの状態です。よく勘違いをされるのですが、ストレスとかリラクセーションとは違う軸です。ストレスの反対はリラックスです。マインドフルの反対はマインドレスで、これらは全く違う軸なのです。ですから、目覚めの状態で緊張・集中していることもあるし、目覚めの状態でリラックスしていることもあります。マインドレスは「心ここにあらずの状態」のことです。ここが一つのポイントです。
 マインドフルネスを理解するときは、マインドレスを理解したほうが分かりやすいと思います。例えば、お母さんが怒って小さな子に手を上げたときに、その手で子供をたたいたとしたら、それはマインドレスです。怒りにとらわれて自分を見失って行動に及んだということです。でも手を上げたときに、「私、何をやっているのだろう」と気づいて、その手を下ろせたとしたら、その気づいた状態がマインドフルなのです。怒りというものがありながらも、その怒りから一歩引いて自分を見ることができた、その感情に気づくことができた状態です。
 また例えば、会議のとき、全く違うことを考えていて、指名されたら「すみません、何も聞いていませんでした」みたいな状態です。自分の心はそこになく、頭の中の世界を生きている状態が、思考の「心ここにあらず」状態、マインドレスの状態です。食欲についても、欲求のマインドレスです。食べたいという気持ちに支配されて、その瞬間の味や感覚が一切ない状態、食欲に囚われている状態です。
 このマインドフルネスは、最初は医学的なものでしたが、一般紙に取り上げられた時に、最初に手に取ったのはシリコンバレーの方でした。シリコンバレーは、世界の最先端のマルチタスクで情報が多い世界ですから、このマインドフルネスで、疲れが緩和できるという効果を感じたということで、そこから一般的に広まってきました。
 最後に、頭の中でイメージ映像を浮かべてから実践に入っていきます。皆さんの頭の中に思考の川があると思ってください。その川に思考の葉っぱが流れていくのですが、マインドレスというのは、この葉っぱと一緒に自分も流されている状態です。マインドフルな状態だと、自分は岸にいるのです。葉っぱは流れていても、自分はそこに流されていないのです。
 マインドフルとは、「今この瞬間の体験に意図的に意識を向け、評価をせずに、囚われの無い状態で、ただ観ること」です。マインドフルでは、良いか悪いかのジャッジもしません。思考や気持ちはあっていいのですが、そこに囚われないということです。岸に上がってそれを見る自分をつくっていきましょうというのがマインドフルネスの最初の状態です。今日は岸に上がる練習を一緒にしてみたいと思います。

■マインドフルにチャレンジ

 座っている場所を整えて、リラックスできる状態にしてください。今日のポイントですが、呼吸に集中してください。私たちは、自分の思考が暴れているのか流されているのか客観視できませんが、一つの軸として呼吸というものがあれば、呼吸以外のことを考えていたら気づくことができ、戻って来られます。
 軽くストレッチをしてからマインドフルに行きます。目はできれば閉じたほうがいいですが、開けていても大丈夫です。ポイントは、私が声で伝えていきますので、できるだけ声に集中してください。視点は、どこか1点を見るか閉じるか、お好きなほうでいきます。
 それでは始めます。骨盤を立てるようにして楽に座り、お尻の肉は軽く後ろにかき分けます。軽く背筋を伸ばしてください。指と指を絡めて1回目ぐっと伸びます。いったん吐く息で力を抜きます。もう一回、息を吸って吐いて、両手から脱力して、肩の力を抜きます。肩を上にしっかり引き上げましょう。肩凝りがあると肩が上がらなくなります。もう一回いきます。
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  一度息を吸ったら吐く息で、頭を下に下げます。最後は首の凝りをほぐします。ゆっくり頭を右から回します。目を閉じながら、同じ方向に、もう一回ゆっくり回します。ご自身のペースで、自分の首が凝ってないかとか、どこか一カ所固くないかとかを観察してみてください。3周回せた方は、反対側にも3回回してください。ゆっくり頭で大きく円を描くように回しながら、首の凝りをほぐしていきましょう。頭が下に戻ってきた方は、一息吐いてゆっくりと頭を戻していきます、背骨の真上に頭が来るようにして、肩の力を抜きます。
 それでは瞑想に入ります。座り直して、できるだけ背中は真っすぐ伸ばすようにしてください。両手は腿の上です。手のひらは下向きでも上向きでもどちらでも安定するほうでいいです。顎を軽く引いて、後ろの首が穏やかに伸びるようにしてください。そして、目を閉じるか、まぶたの力を緩めてどこか一点を見るようにしてください。いったん視界をシャットダウンして、自分の意識を内側に向けていきます。鼻からゆっくりと息を吸って、吐きます。もう一呼吸、吸って吐きます。呼吸をしながらもう一度体を観察していきます。足元や腰回り、肩や首回りで違和感があれば体の感覚に従い、自分の居心地がいい状態に置き直してください。顔が一番緊張しやすいので、顔の力を全部抜いて、一番楽な表情で、呼吸を感じます。鼻から入ってきた呼吸が鼻の奥のほうから胸のお腹の下まで流れるのを感じて、吐く息では、温かい空気が鼻先から出ていきます。今、そこにある呼吸を感じ続けていきます。顔に力が入ったり、体が前のめりになったりするのは肩に力が入っています。それに気がついたらいったん肩の力を抜いてあげてください。仕切り直します。意識は向けますが、あくまで体をリラックスしてください。もう少しだけ続けます。自分の意識が呼吸からそれていることに気づいたら、理由を考えず、ただ戻ってきてください。頭の力も抜きます。呼吸を感じます。今、自分の体の中にはどんな呼吸が流れているでしょうか。ほおや口回りの力を緩めて、口角を少し上げてみましょう。柔らかな表情をつくります。表情が緊張していたことにも気づきます。はい。リラックスしてください。
 いかがでしたでしょうか。時間の都合で今日はこの1回で終わりますが、今の瞑想で5分くらいです。5分でもいいので、これを続けていただけると、自分のコンディションアップにもつながると思います。

■おすすめ書籍

 最後に書籍をご案内します。マインドフルネスに興味がある方は、藤井英雄先生の本はお勧めです。先生の『マインドフルネスの教科書』というのが一番読みやすくてオーソドックスでいいと思います。私の本は、どちらかというと、健康的なコンテンツから発信しているので、ピュアなマインドフルネスの本というわけではありませんが、少し疲れを取りたいなという場合には、是非読んでみてください。
 それから、私は平日に2回、オンラインで、9時半から15分間マインドフルネスをやっています。もしご興味があれば、お問い合わせください。今日はありがとうございました。みなさんのご健康をお祈りしています。

■伊藤会長あいさつ

〇伊藤 これまで数多くの方に二木会の講師として出ていただきましたが、平成18年卒の松尾さんは、これまでの最年少でいらっしゃいます。
 私自身は、かつてはできるだけパソコンは触らないようにし、スマホではなくてガラケーで頑張っていましたが、コロナが始まって以来、仕事をオンラインでやらざるを得なくなり、ついにスマホも買いました。ストーンエイジから現代人になると、確かに肩凝りや目の疲れとか、体が硬直しているような気がしていて、私も現代人と同じ病を抱えるようになったなと思っている時に、ちょうど今日の話がありました。
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  まさにそれを解消するための一つの方法として、今日はマインドフルネスという新しい考え方を紹介いただきました。昔から、いわゆる瞑想というものが人間の精神をリラックスさせ、また豊かにして効果があると言われていました。今日は、現代のストレスに対しては、このような方法が有効なのかと、改めて実感いたしました。私たちも、ちょっとした時間の、瞑想というかマインドフルネスの体の動かし方や心の動かし方を学ぶと、新しい時代における新しい解決法になるのではないかと感じました。今日お聞きの方が、これを機会にこのようなことを実践すれば、これからのストレスの多い社会を乗り切っていけるヒントになるのではないかと思います。大変有意義なお話でした。

(終了)