第671回二木会講演会記録

「スポーツドクターのやりがいと現在地 ~点がつながり豊かな『猷』になる~」

講師:服部惣一さん(平成4年卒)
開催日時:令和5年2月9日(木)19:00-20:00

〇渋田(司会) 本日の二木会は、平成4年卒の服部惣一(はっとりそういち)さんに、「スポーツドクターのやりがいと現在地 ~点がつながり豊かな『猷』になる~」をテーマにご講演いただきます。
 服部さんは、国際基督教大学教養学部を卒業後、同大学大学院教育学科を経て、2004年東海大学医学部をご卒業されました。2006年より亀田総合病院救急科に入職後、2012年から亀田メディカルセンタースポーツ医学科にてスポーツ医学に従事されています。医学生時代に日本ラグビー協会で通訳に携わった経験から、2017年の女子ラグビーワールドカップに日本代表チームドクターとして帯同され、2019年に日本で開催された男子ラグビーワールドカップではマッチドクターとして決勝戦を担当されました。2020年、ピッツバーグ大学 Orthopaedic Robotics Laboratory研究員を経て、2021年には東京医科歯科大学大学院の医歯学総合研究科にて博士課程を修了され、現在もスポーツ医学の分野を中心に、精力的に研究や医療活動を続けておられます。

■講師紹介
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〇坂本 平成4年卒ラグビー部の坂本宗之祐です。服部くんは真っすぐな努力家です。私たちラグビー部の同期は15人ぐらいいて、みんな馬鹿で助平ばかりだったのですが、助平だということを除いて、唯一まともなのが服部くんです。ラグビーはとてもきついスポーツなのですが、彼はとても真面目で、きつくても、それを言わないプレーヤーでした。
 大学生の時、小田くんというラグビー部同期の家で酒を飲んで、私は横になっていたのですが、その時に服部くんと小田くんが人生の話をしていました。服部くんは当時、ICUの教養学部にいまして、「今やっている勉強は自分の道ではないような気がする」と言っていて、それはよく覚えています。そうしたら数年後に大きな決断をして医学部に行きました。それには驚きました。
 私は半年前に肩を痛めて服部くんのところに行って診てもらいました。そこで印象的だったのは、彼の職場のスタッフの方たちが服部君のことを「日本有数のすごい先生ですよ」と褒めるのです。私も同期としてとても誇らしい気持ちになりました。

■服部氏講演

〇服部 助平という過分な紹介をありがとうございます。スポーツドクターをやっています平成4年卒の服部と申します。今週と先週は手術を1件も入れずに、気合を入れてこの場に臨みました。

■私の修猷館ラグビー部時代
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 私がスポーツドクターになったルーツは、修猷館高校のラグビー部時代にあります。怪我ばかりでした。高校1年の冬は、足の種子骨の疲労骨折をして半年間離脱していました。それが治ったと思ったら、高校2年の夏に、今度は脛(すね)の疲労骨折。高校3年になってようやく治ったと思ったら、今度は足首を何度も捻挫してしまうという足関節不安定症に悩まされました。この足関節不安定症というのは、今の私の研究テーマにもつながっていますので、これらの怪我が今の自分をつくったのかなと思っています。

 私のラグビー部時代を語るのに欠かせないのが、岡本現館長です。私たちが3年生の時に転任されてきました。今の学生に聞くと、岡本先生はとても優しいと言うのですが、当時の先生はサングラスをしていて「バリえず」でした。よく草場くんなどと、「サングラスしてどこを見とうか全然分からんけん、バリえずやね」という話をしていました。
 私はバックスで、坂本くんは副キャプテンでバックスを取りまとめる役でした。岡本先生はもともとバックスの選手でいらっしゃったので、非常に厳しい指導を受けました。そのような岡本先生ですが、私が怪我の繰り返しでしたので、そこは温かく見守っていただいて、無事に3年間ラグビーを続けることができました。今回定年だということですが、岡本先生には感謝しています。

■スポーツドクターのやりがい(Rugby World Cup)
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・ラグビーワールドカップ

 今年はフランスでワールドカップが行われます。着目していただきたいのは下川甲嗣選手です。修猷館高校から早稲田に行って、2022年に初めて日本代表に招集されて、そこでヘッドコーチのジェイミー・ジョセフに岡本先生とも違う厳しい指導をしてもらって、今、代表に定着しようとしているところです。

 4年前に日本で開催されたワールドカップの時、私は、開幕戦の他、準決勝、決勝とドクターを務めさせてもらいました。一つの試合にドクターが10人以上付いています。マッチドクターは中立でなくてはいけませんので、第三国からのドクターに入ってもらいます。
 こんなに人数が必要なのか、見たいだけじゃないのと思われるかもしれません。確かにそれは否定できませんが、ワールドカップ医事業務実施マニュアルというのがありますので、それに沿って説明します。
 マッチ・デー・ドクター(MDD)とそれをアシストするアシスタント・マッチ・デー・ドクター(AMDD)がいます。そして、ICL(immediate care lead)、ICD(immediate care doctor)というドクターがいます。倒れた選手を搬送する担架隊をリードする人たちです。そして、脳振盪(のうしんとう)を評価するドクターもいます。また、縫合するドクターや歯科や内科のドクターもいます。観客も6万人ぐらい入りますので、その観客に対応するドクターも必要です。海外からのVIPに対するドクターも必要です。そしてそれを統括するドクター、そしてさらにすべてを統括するドクターが必要になります。
 フィールドのすぐそばにいるのがMDDです。そのMDDが対応しているときにもプレーは継続していますので、それをアシストするのがアシスタントMDDです。そして、ICL、ICD、担架隊がいます。

 私は、イングランドとニュージーランドの準決勝でMDDをやりました。決勝戦では脳振盪の担当をしました。
 イングランドとニュージーランドの準決勝はキックオフが5時だったので、3時間以上前から集まって準備をしていきました。MDDの主な役割はHIAというものです。HIAというのを皆さん聞いたことがあるでしょうか。これを知っているとラグビーが面白くなると思いますので、知っておいて損はないと思います。HIAとは、Head Injury Assessmentの省略で、脳振盪を疑うような所見を拾い上げるシステムです。これは明らかに脳振盪だと思ったら即退場ですが、微妙な場合、一時交代させて脳振盪の評価を行います。裏方やピッチサイドのモニターで幾つものアングルから選手たちの受傷シーンを見て、もちろんスローや早送りでも見て、くまなく見つけます。怪しければ、ドクターが選手をチェックする態勢になっています。そしてHIA専用の部屋が競技場内に準備されていますので、そこで脳振盪の評価を行います。

 脳振盪とは、頭や首に大きな力が加わって、一時的に脳の機能が低下することです。意識が一時的になくなったり、記憶がおかしくなったり、足元がふらつくということです。皆さんも脳振盪に近い状態は必ず経験しています。それはアルコールによる一時的な脳の機能低下です。寝てしまって意識がなくなったり、記憶が怪しくなったり、千鳥足で歩いたりということが、アルコールによって起こります。現象としては脳振盪ととても似ています。

 2015年に『CONCUSSION』、まさに脳震盪というタイトルのウィル・スミス主演の映画が公開されました。アメフトの選手が何度も脳振盪をやっていて、引退後にうつ病やパーキンソン病を発症し、そこに因果関係があるとドクターのウィル・スミスが追及していって、それを否定するNFL側と戦うという映画でした。このころから、脳振盪がいかに危ないものかというのが世に広がり始めました。今ではワールドカップラグビーは、一つでも脳振盪の症状があれば必ずやめさせるというルールになっています。

 以前はそんなに手厚く扱われてはいませんでした。「魔法のやかん」というものがあって、倒れたら駆けつけて、やかんの水を掛けたら意識が戻るというものです。これは、ただ単に、脳振盪での意識消失が一時的に戻ったという話です。その後は絶対にプレーをしてはいけないのですが、昔はそんなことをやっていました。
 ただ、選手の立場からすると、本当に死んでもいいと思ってプレーをしています。私たちでさえ、東福岡とかと対戦する時は、もう東福岡に勝てるのだったら死んでもいいと思いながらプレーをしていました。いわんや、国を代表している選手たちが、4年に1度の晴れ舞台で戦えば、恐らくみんなこのような気持ちで戦っているのだと思います。
 しかし、メディカルとしてはそれを止めなければなりません。ここに選手やチームとメディカルとの間にコンフリクト、ジレンマがあるわけです。ですから、この選手を脳振盪として外に出すときには、かなり客観的で正確な判断が必要となります。

 完全に意識がなくなっていて担架で運ばれるような場合は、誰が見ても脳震盪です。他方、一瞬意識が飛んだように見えたり立った時に足元がふらついているようだが、その後はちゃんとプレーしている、といったような、脳振盪が疑われる微妙な場合もあります。そのような場合は、専用の部屋に連れていきます。そしてCSXというアプリを使って、選手に多くの単語を聞かせ、それをトータルで何個思い出せるかの確認を3回繰り返します。このような記憶のテストのほか、症状とバランスのテストを行い、できるだけ客観的に選手を評価します。その時間は、ワールドカップの時は10分間でしたが、今は12分に延長されています。ワールドカップの時は時間内に評価が終わらずにチームドクターとトラブルがありましたので、今は、試合前に必ずチームドクターときちんと話し合いをします。誰がHIAをやるのか、HIAの時間はどの段階から開始になるのかを明確にしてお互いに確認します。また、より公平で見逃しがないようなHIAを目指して、福岡の前田先生が主導でAIによってより客観的に検出しようという試みがなされています。

 私は、2017年の女子ワールドカップのアイルランド大会にはチームドクターとして参加しました。女子代表だからか、メディカルチームは女性が多くて、男性ドクターは自分だけでした。チームドクターの主な仕事は、まず、選手に何か問題があったときに適切に診断・評価し、治療をするということです。そしてその治療を行う上で、メディカルチームのコーディネートをします。それからHIAやドーピングのレクチャーもします。治療は私だけではなく、医学療法士がストレッチをやったり、トレーニングをしたりもします。この時も、ハムストリングス、つまり太ももの裏側に肉離れの既往症がある選手から、ワールドカップを3戦戦った後、ハムストリングスが張ってこのままだと肉離れしそうな気がするという訴えがありました。色々と治療したもののあまり張りが取れなかったため、ハイドロリリースという注射をして、試合の3日前になって練習に参加でき、無事に試合にも出ることができました。そのような時がチームドクターとして一番やりがいがある瞬間です。

 ただ、光とともに闇があります。特に代表レベルのドクターをやるとそう思います。2017年の女子ワールドカップ前は、国内外で年間90日の合宿をしました。今の男子のラグビーは、2017年の女子のラグビーの時より合宿や海外に行く回数も多いので、メディカルチームは、時に家庭を崩壊させながら頑張っているということをご理解ください。

・東京オリパラ2020

 この時は晴海の選手村の中に仮設のクリニックが設置されました。普通のクリニックと同じように、整形外科も内科もあり、当時はコロナも大変でしたので感染症科があり、歯科も眼科もありました。整形外科のブースも四つあり、私はその診察室3の担当として参加しました。
 この時の思い出深かった症例を紹介します。あの道下さんが優勝した視覚障害のレースですが、代表ランナーが本番の前日に来て、足が痛くて走れないと訴えてきました。ひどい外反母趾でした。もう明日だから注射するしかないと思って注射をしました。そして歩かせてみて、痛くないだろうと確認したところ、「No pain」と言っていました。でも私がそう言わせただけではないか、本当に痛くないのかかが心配でしたので、翌日、沿道に行って応援して、ちゃんと走っているのを確認しました。その時はとてもうれしかったです。

・アスリートの医療

 エリートアスリートに対する医療の特殊な点は、短時間での成果を求められるということです。先程のオリンピックのお話のように明日の大会に出るとか、先程の女子ワールドカップのお話であれば1週間後の試合に出なければならないというように、短時間の成果を求められます。整形外科の通常の診察は、問診・触診をして、様々な検査をして正確な診断をして、最後に注射をしたりリハビリをしたりというフローです。それは通常は1日では終わりません。短くても3日ぐらいかかるのですが、これを全部1日でやります。しかも結果が大事ですので、あまり良くなければ、また最初に戻ってやり直しになり、何とか痛みを少なくして試合に出てもらいます。このように短時間で成果を出すためには非常に診察に時間が掛かります。日本の保険制度では、注射や保険の回数の制限があって完全に赤字になってしまいます。
 スポーツドクターは一般の人は診察しないのですかとよく聞かれますが、エリートアスリートだけを診ていたら全くペイしません。ですから90%以上は一般の人を診ています。一般の人とアスリートの医療に共通するのは、目標がある人はやはり治りやすいということです。それは大きな目標である必要はありません。例えば、ゴルフをしたいとか、旅行に行きたいとか、今度生まれるお孫さんの世話をしたいとか、1万歩歩きたいとか、そのような目標を持って、いつまでにその目標を達成したいのか治療のタイムラインを明確にします。アスリートは目標が明確なのですが、一般の人に関しても、目標が明確であれば治療はやりやすいです。

■スポーツドクターの現在地(Research on Anti Aging)

 スポーツドクターの仕事を分類していくと、一つは、医療機関で個人に関わるスタイルがあります。次に、チームドクターのようにチームを相手に現場で活動する現場密着型スポーツ医があります。それから、ワールドカップのドクターのように、観客対応も含めて現場をコーディネートする、コーディネート型スポーツ医という働き方もあります。そして、現場からは離れて、子供たちのグラウンドをつくりましょうとかを立案して実行するような、地域健康増進型スポーツ医というのもあります。
 そして、私が個人的にスポーツドクターとしてもう一つ大事だと思っているのは、研究です。HIAのAIを使った研究も現場に即した研究ですし、現場からいったん離れて、それが離れれば離れるほど、より全体に影響を及ぼすようなことができる研究もあります。私が今やろうとしているのが、アンチエイジングの研究です。アンチエイジングとは美容外科の世界だと思われているかもしれませんが、そうではありません。本来のアキレス腱は繊維が揃ってパスタの束のようになっているのですが、アスリートの損傷したアキレス腱をエコー画像で検査してみると、老化したマウスの、きれいな繊維が少なく変色したアキレス腱に近い画像であることが確認できます。これは、オーバーユース、繰り返し使うことによって、その部分が部分的に老化している現象と考えられます。細胞レベルで見ると、プロテオグリカンという老化物質が沈着しています。
 ピッツバーグ大学で今やっているのが、これを若返らせる治療薬を開発するということです。ピッツバーグはアメリカの、昔は鉄鋼で有名な都市でしたが、今は、ピッツバーグ大学とかカーネギーメロン大学とかがある学園都市として生まれ変わっています。スポーツ医学もとても発展しています。残念ながら2年前ぐらいに亡くなられたのですが、香港出身のFreddie Fu先生の功績でスポーツ医学のメッカになっています。スティーラーズというアメフトのチームがあったり、ペンギンズというアイスホッケーのチームがあったり、桑田や筒香が行っていたパイレーツという野球のチームもあります。
 ここでメトホルミンという薬を使った研究が行われています。メトホルミンというのは昔からある糖尿病のお薬です。けっこう安全な薬ですので使われることが多いです。この薬によって血糖が下がるとか体重が減るということだけではなく、最近では、この薬の新しい作用として、がんのリスクが下がるとか、アンチエイジングの効果があると言われ始めています。動物実験では老化がリバースされることが分かってきたので、ビッツバーグでは、今度は人間のアキレス腱で本当に同じことが起こるのかを調べようとしています。このため、私は4月からピッツバーグ大学の研究員になることになりました。

■猷(みち)を修む(Stay Hungry)
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 私が今までたどった猷(みち)を振り返りたいと思います。修猷館で岡本先生に熱い指導を受けて、ラグビーという猷を修めました。次に国際基督教大学(ICU)に行って、ここは英語を教育する大学ですので、ラグビーだけではなく英語の猷も修めました。その時は、英語の先生になろうと思って留学をしていたのですが、教育実習には単位が足りなくて、大学院に行って教育学を学びながら教員免許を取りました。ただ、英語の教員免許を取っておけばよかったのですが、私はうっかり社会の免許を取っていました。社会は男性の教員が多くて教員になれなかったのです。それでこの猷は勝ち目がないと思っていたところに、東海大学の医学部が英語と小論と面接で学士入学、学士編入の4年生で入れるようなプログラムを出していて、これを受けたら受かって東海大学の医学部に行くことになりました。そこで日本ラグビー協会の通訳をやって、英語とラグビーの猷がここに集約されました。

 医学部を卒業して今の亀田病院に入って、整形外科をやろうと思っていたのですが、スポーツを診るに当たっては、やはり脳振盪も風邪も全部を診ないといけないということで、救急科というところにまず入りました。そしてそこで超音波に出会いました。超音波で検査することで、救急のいろいろな現場ですぐに医療ができるのです。これは本当に面白いと、そこから超音波の猷を追及していきました。超音波というのは、心エコーや赤ちゃんなど、内科や産婦人科の領域では使われているのですが、整形外科ではおそらくあまり使われていませんでした。整形外科にかかって超音波で診療された経験のある人はあまりいないと思います。ですが、これは面白いと思って、その研究を東京医科歯科大学でやって、博士号を取りました。

 同時に亀田病院のスポーツ医学科にいて、代表のチームドクターや東京2020の選手村のドクターの経験もさせてもらいました。それも、それまでのラグビーと通訳の経験や超音波の経験がつながったものだと思います。同時に世界ラグビー協会、ワールドラグビーのインストラクターもやっていて、ドクターに、どのようなアプローチで選手に対応すべきかを教えています。これはおそらく教員免許を取っていた経験が大変役に立っているように思います。4月からは、亀田病院を辞めて、ピッツバーグ大学に移籍することになりました。そこでアンチエイジングの研究や、超音波が手術に応用できないかという研究をやるつもりでいます。

 ここに至るまで、今までのいろいろな経験がつながっているように思います。それぞれの地点では、このようにつながっていくとは全く予想はしていませんでした。それぞれのところで猷を修めようと思って一生懸命にやっていて、後から振り返ってみると、それぞれがつながっていたのだなと思います。
 最後に、アンチエイジングに関して、私がサイエンスではなくて私見として本当に思うのは、いろいろな新しいことに次々と挑戦していくことが、アンチエイジングの一番のコツではないかと思っています。
 最後に、スティーブ・ジョブズの「Stay Hungry」という言葉がありますが、それがアンチエイジングにつながると思っています。この言葉で私の講演を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

■質疑応答
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〇財部 昭和42年卒の財部(タカラベ)です。私は今年75歳になるのですが、テニスで、全日本のベテランの、75歳から80歳のクラスで全国ベスト100を目指そうと思っています。去年に膝の怪我をしました。実際に、手術なのか、マッサージやリハビリや漢方薬で治すか、選択の判断についてアドバイスをお願いします。

〇服部 手術についての判断ですが、それは、痛みが、体の使い方や機能によって生じているのか、それとも何か構造が壊れてしまって出ているのかによって大きく二つに分かれてきます。実際には両方ということが多いのですが、そこをはっきりさせる必要があると思いますし、そのためにはやはり画像診断とかが必要になってくると思います。

〇原 昭和62年卒ラグビー部の原です。サッカーの三浦和良選手とか、また私の先輩でもあるサントリーの吉野選手は60歳を超えても現役選手と変わらないパフォーマンスをします。もちろんストイックにトレーニングをされていますが、先生から見て、素質的なことが大きいのでしょうか。エリートアスリートはどこが違うのでしょうか。

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〇服部 ジュニアのレベルで、これは突出しているなという人はかなり素質の部分が大きいと思うのですが、吉野さんとかカズさんに関して言えば、やはり素質というより本人の努力が大きいと思います。常に目標を持ち続けたり、新しいことをやったり、新しい環境に触れ続けるということで若さを維持していると思います。彼らは、もう彼らがプレーをするということだけで、レジェンドと言われます。誰も立っていないところに立っているので、もう既に自分に高い目標が課されているのです。それに向かって常に努力しているということが、アンチエイジングのコツになっていると個人的には思います。

〇原 それはどんな人でもできますか。

〇服部 できると思います。

■会長挨拶
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〇伊藤 昭和42年卒の伊藤です。どのお話ももっと聞きたい、もっと時間が欲しかったと感じました。
 これからはアメリカに行かれてさらに研究を続けられるそうで、スタイルもそうですが、いわゆるチャレンジを続けていらっしゃるお姿が、若々しい方だなという印象を持ちました。サッカーのカズさんやラグビーの吉野さんの話も出ましたが、新しいことに挑戦することが若さの秘訣だということで、私自身も挑戦をしていかなければいけないという気持ちを強くした次第です。
 またラグビーのチームドクターやスポーツドクターのお話は、表からはなかなか分からないところのお話で、興味深く聞かせていただきました。
 今日はありがとうございました。これからもご活躍されることを心からお祈りしています。(拍手)

(終了)


■ 講師からの講演後の補足説明

おかげさまで講演の後も多くの質問や診察依頼を受けました。特にメトホルミンについての質問が多くありました。
講演では時間の都合上で述べませんでしたが、副作用のこともちゃんと申し上げておく必要があり、その情報をシェアさせていただきたいと思います。

1.メトホルミンには抗老化作用が研究で報告されておりますが、その作用は保険で認められておりませんので、糖尿病という病名がつかなければ通常の病院ではお薬を処方することはできません。(保険ではなく自費で処方する美容系のクリニックなどはあります。)

2.メトホルミンには作用とともに副作用があり、軽いものとして下痢などの消化器症状があります。また重篤な副作用としては低血糖や乳酸アシドーシス(意識が悪くなり命にも関わるため救急車での対応が必要です。)があります。

3.よってお薬を入手されたとしても、上記のような症状があれば服用はおすすめしません。

適度な運動や軽い絶食にもアンチエイジング作用がありますので、まずはそちらを試していただくのはいかがでしょうか。