第625回二木会講演会記録

『消費者のこころをつかめ!~ブランドマーケティングの面白さ』

講師:山田 眞二 氏(昭和50年卒)

■講師紹介

○久田 平成8年卒の久田です。山田常務は今の私の上司で、1年近く一緒に仕事をさせていただいて、いつも叱咤(しった)激励されています。仕事では厳しいのですが、長くお酒に携われてきたためか酒を飲めば10倍ぐらいの活力で大変お茶目になられます。

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■山田氏講演

 私はサントリーに入社して、希望して宣伝部に入りました。私が修猷を卒業したのは昭和50年で、五輪会と呼んで同期で集まっています。修猷の時の文化祭と運動会のあの凄さと感動の体験が、経済学部を出たのに宣伝に携わっていることにつながっていると思っています。高校2年の時には8ミリで修猷の学生生活をたくさん撮って、それに当時はやっていたボブ・ディランやピーター・ポール&マリーの曲を乗せて映像をつくっていました。その時の「映像と音楽は面白い」という体験もこの世界に入ったきっかけかなと思います。運動会の応援コンテストでは、みんな一丸となって細かいところまで企画をつくり込みますが、それは宣伝とか商品開発とかに非常に近い部分があり、修猷のあの3年間で感動した体験が、今のサラリーマン人生の中で自分の一番の宝物になっていると思っています。
 私は1980年にサントリーに入社しました。そこから宣伝を16年間、商品開発を20年間やり、結果、私はこの二つしかやったことがありません。この二つに関しては、サントリーの中でも長くやってきたという自負があります。最初に宣伝で担当したのが、ペンギンのCMで松田聖子さんの「SWEET MEMORIES」という曲を使いました。これはヒットして、そのおかげで松田聖子さんの結婚式に呼ばれました。もちろん1回目の結婚式です(笑い)。仲人が石原裕次郎ご夫妻というものすごい結婚式でした。その後、400本ぐらいのCF活動に参加しています。
 私が関わった商品開発は通算で500ぐらいあります。この数は現役最多だと思います。ただ我々の業界には「千三つ(せんみつ)」という言葉があります。千出しても三つしか残らないということです。死屍累々と消えてしまった、誰も知らない商品がたくさんあるということです。

■サントリー宣伝部

 サントリーの宣伝部は、寿屋から始まってもう120年ぐらいの歴史があります。創業者は鳥井信治郎です。今、日経新聞さんの小説が伊集院静先生の『琥珀の夢』で、創業者の鳥井信治郎のストーリーが描かれています。開高健先生は、私が1980年にサントリー宣伝部に入った時はまだお元気で、月に1回ぐらい宣伝部に遊びに来られていました。足が長くて上半身が大きい、アンクルトリスのような格好をしている方でした。けっこう眼光鋭く、宣伝部員たちが机に向かっていると「宣伝部員が電卓たたいて何になる。世の中の神羅万象には面白いことがいろいろある。」と怒られた記憶があります。宣伝部には、このように面白い先輩がたくさんいらっしゃいました。
 創業者の鳥井信治郎と次の佐治敬三と、こてこての関西の親分が会社をやっています。私も若いころに佐治敬三に宣伝のプレゼンテーションをしたのですが、細かいことはほとんど何もおっしゃらず、「この宣伝はおもろいか?」とだけおっしゃいました。「おもしろいです」と言うと、「なら、よし」という感じでした。とにかく面白いことをやらないと駄目、というのが会社のDNAの中に強く残っています。
 寿屋時代も含めて、サントリーはお酒と清涼飲料を売ってきていますが、一貫して、豊かな生活、お酒のある生活ということをテーマにやってきています。我々がずっとやってきたのは、お酒を飲みましょうということではなく、一緒に生活を楽しみましょうというトーンです。
 今日の講演のタイトルは「ブランドマーケティング」としていますが、あんまり会社の中でマーケティングという言葉は使いません。むしろ「現場・現実・現物」の三つの言葉を大事にしています。やはり現場に行かないと、お客さんが見えてきません。それから会議室の中だけでやっていくと、現実が分かりません。そして商品というのはその現物を手に取ってみないと、それが分からないということで、この三つを突き詰めるというのが日々の仕事になってきます。

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■カラーマーケティング

 われわれ商品開発をする人間は、最初にブランドの正体を理解しなければなりません。ブランドというのはお客さんの頭の中にあるイメージです。これはなかなかやっかいです。開発者やデザイナーが一生懸命にイメージを磨いても、お客さんの頭の中に変なかたちでイメージができてしまうと、これは元も子もありません。頭の中のイメージに、われわれが手を入れて動かすことはできません。それに付随するいろいろなチャンネルを使って、お客さんの頭の中にいいイメージを常につくり続けることが大事になってきます。
 これだけ情報が多い中で、商品を頭の中に記憶してもらう、イメージをしっかり持ってもらうことを考えます。そのとき最初に人間の頭に入ってくるのは、一番分かりやすい部分で、商品の「ネーミング」です。そしてもう一つは大変シンプルですが「色」です。色を大切に使うカラーマーケティングがサントリーの得意技です。クレヨンの12色に金色と銀色と銅色の三つを加えた15色が基本のカラーになり、その中で誰が最初に一つの色を取るか、というのが大きなポイントになってきます。
 角瓶のラベルは黄色で、このブランドは黄色のイメージにしています。広告も街の看板もお店のポスターも全部黄色で統一しています。黄色は注意して見ましょうという色なので、パブロフの犬ではありませんが、町を歩いていて黄色の色を見るとハイボールを飲みたくなる、というのが究極のゴールだと思っています。金麦は紺色です。これは、紺色のブレザーとかで真面目で清潔感がありクオリティが高いという連想になります。金麦は低価格帯の商品ですが、その中でちょっといいものに見せるということです。檀れいさんが亭主と一緒に飲もうと家で待っている、明るい楽しい家庭のイメージで使っています。オールフリーは白です。白は自由で伸び伸びとした雲のような感じを連想します。
 ザ・プレミアム・モルツは13年前に今のパッケージにしました。その時に日本画家の千住博先生から「あのゴールドと深いブルーというのは、ツタンカーメンの黄金のマスクのように古代エジプトの高貴な組み合わせですから、サントリーはビールの発祥であるエジプト・メソポタミアを意識してデザインしたのですね。さすがです」と言われて言葉がありませんでした。全くそのつもりはなく、たまたまそうなったのですが、見ていると、プレミアムモルツの向こうにはビール4千年の歴史があるという感じになります。

■ネーミング

 ネーミングは日本語の特徴とマッチしています。ビールは7音プラス濁音です。「スーパードライ」、「イチバンシボリ」、「マグナムドライ」、「のんあるキブン」、「ストロングゼロ」とかです。7音というのは日本語が美しく感じる音のリズムです。また濁音というのは結構脳が意識して音を発していて、聞いても濁音は印象に残ります。ヒット商品は7音プラス濁音になっています。
 村田英雄の「王将」の歌詞は、「吹けば飛ぶよな将棋の駒に・・・」と、7音のリズムでできています。都はるみの「北の宿から」の歌詞は、7音・5音・7音・5音のリズムです。ほぼ全ての校歌は7音7音か7音5音です。修猷館の館歌も7音5音7音5音になっています。千年以上前の短歌は5・7・5・7・7ですし、300年とか400年前の俳句も5・7・5ですので、日本語は5音7音5音の中で音がきれいに流れていくということが長く続いてきています。このリズムが日本人の体の中に染み付いていて、心地良く感じられるようになっています。日本語のリズムは7音5音でできているということです。
 ただ、今は世代を超えたヒット曲が生まれなくなっています。それは今の10代、20代前半の人たちはこの5・7の音のリズムではなく全く違った音のリズムの中で生活をしていて、今はそれぞれの年代でそれぞれの音のリズムがあるのだろうと思います。
 脱線しますが、リズムは大切です。例えば、経済の為替の変動、世の中のトレンドの動き、植物が花開く、大気が渦巻く、これらは全部リズムです。リズムを制することができれば全てのことをコントロールできるのではないかと思います。ネーミングはその中の小さな一つなのですが、世の中の神羅万象のリズムを感じて、それを上手に体感できればいい動きができると思います。
 濁音があると強い言葉になります。ゴジラ、ガメラ、キングギドラという悪役怪獣は濁音が入っています。モスラだけには濁音がありません。モスラは温厚な怪獣です。マ行の音は優しく感じます。ママとか、ムーニーちゃん、ミルキー、マミーポコという赤ちゃん関係の商品には大体マ行が入っています。それはビールにも関係してきます。二十数年前に出したモルツという商品は、その時にあったスーパードライとかに比べて優しいビールだったのです。
 「ザ・プレミアム・モルツ」というのは、モルツのマ行の優しさと、濁音の定冠詞の「ザ」に安定感と強さを持たせています。そして「プレミアム」というパ行の破裂音は華やかさと明るさをイメージしています。
 ただ最近は4音が伸びてきています。「イタメシ」、「ヤフオク」、「イケメン」、うちの商品ですと「ほろよい」、「プレモル」、「キンムギ」、「カクハイ」とかの4音の短縮省略ネームです。これは恐らく世の中が忙しくなってきているのと、4音に省略するとかわいらしい音のリズムができるからだと思います。また、今、ヤフーのトップニュースは全角文字で13文字という規定があり、その中で長い名前は向かないということがあります。アメリカも同じような傾向にあると聞いています。4音の短縮省略ネームは、言葉を盆栽化する感覚です。ザ・プレミアム・モルツは「プレモル」、ポケットモンスターは「ポケモン」、パズル&ドラゴンズは「パズドラ」、他に「ニコ動」、「ミスチル」、「メンタツ」とあります。逆に考えると、長いブランド名でも4文字略称ができるとメジャーになるということです。

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 商品の名前は子供の名前を付けるのと一緒です。商品は子供ですので、その名前で、全てが伝わるように、心打たれるように、耳に残って離れないようにということを考えます。大きなブランドになると、まず300個とか500個とかの名前を考え、それを少しずつ絞って最後は五つぐらいにして、その後はサイコロを投げて「エイヤッ」で決めるという感覚です。
 ネーミングというのは、会社の事業戦略、営業活動、全社の活動、広告PRとかいろんな活動に広く応用でき、ネーミングを意識するといろいろな活動がより楽しくなるし、より意味が出てくると思います。ネーミングを勉強するといろいろな会社生活の中でもうまく使えると思います。

■商品開発

 サントリーの商品開発はチームでやります。マーケティング、宣伝、第一線でものを売る営業の人間、それから工場で商品をつくり込む人間、それから最近はデザインが重要になってきていますからデザイナー、それからR&Dで中身開発をやる人間たちが1チームになってプレモルや角ハイボールをやっています。面白いのは、宣伝の人間が中身に文句を付けたり、中身の人間が今度の宣伝は駄目だと言ったりします。それぞれが相互にしっかりものを言える部分が大事だと思っています。個人知ではなく組織の知恵をしっかりつくり込んでいるということです。70年選手の角瓶をはじめとして、弊社のブランドには20年選手、30年選手はたくさんあります。長くつないでいくためにも入れ替えをしながらチーム制を続けていって、商品を育てています。

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 黒澤監督の「七人の侍」という映画がありましたが、この映画はとても奥が深いです。前半はマーケティングで言う組織論の教材になるぐらいの内容だと思います。集まった7人の侍の性格、専門性、バックボーンはそれぞれ違っています。剣の達人もいます、ムードメーカーのお調子者もいます、それから心配性の若者もいます。いろいろな人たちがいることで圧倒的に強くなる、この映画の面白さはそこにあるのです。商品開発におけるチームも、専門性の違う人間がどれだけ集まれるか、誰もがリーダーであり、誰もがメンバーとなる、円で描ける関係にするということがポイントだと思います。

■お客様をいかに知るか

 「事件は会議室で起きているんじゃない!現場で起きているんだ!!」という「踊る大捜査線」の青島刑事の有名な言葉がありますが、会議室の中で「ああでもない、こうでもない」と議論しても、会議室の中には本当の「現場・現実・現物」はありません。
 お客様にインタビューをしたり、売り場で買われる現場を見て、お客様に近付くことが大事です。ある種の調査です。ただ、今回のアメリカの大統領選挙のように今は調査が当たりにくくなっているということはありますが、お客様が商品を買っている姿は真実です。
 実は自分も1人の消費者なのです。何かを買ったとき、どうして自分がそれを選んだかを説明するのは結構難しいです。でもそれがきちんと説明できるようになったらお客様の動きが少し分かるようになります。自分が1人の客なのだということは一つの重要な要素です。人間の行動で意識されているのは5%のみで、残りの95%は無意識だそうですので、この無意識の行動をしっかりと研究することが商品開発、マーケティングでは大切です。

■ビール、ウイスキーの移り変わり

 サントリーは「水と生きる」を標語としてやっています。水が全ての商品の基ですし、生活、人間の体、社会を考えたときに、やはり水が一番大事ということです。その水を使うビールは、佐治敬三の「やってみなはれ」という一言で50年近く前にスタートしました。昔のサントリービールはまずかったと言われたこともありましたが、今、ザ・プレミアム・モルツがモンドセレクション最高金賞を取り、矢沢さんの「金曜日はプレモルの日」というメッセージで大きな成長をしてきています。
 ウイスキーについていいますと、これは時間がかかるお酒です。ビールの熟成は数日間、焼酎は数週間というのに比べて、ウイスキーは数年から数十年の熟成が必要です。その分、サントリーとしては角瓶という商品を日本人の味覚に合う商品として大事にしてきました。ウイスキー市場のピークは1980年ぐらいでしたが、そこから焼酎も含めていろいろなお酒が出てきて、残念ながらウイスキー市場は急に落ち込みました。それを身近なお酒にということで、角瓶をソーダで割った角ハイボールの普及・宣伝に力を入れ、そのおいしさを強調し、飲む場所も居酒屋さんにまで広げ、ウイスキーとの距離感を縮めました。
 おいしい角ハイボールにはいくつかのレシピがあるのですが、今、角ハイボールが世の中でお客さんの支持を得ているのはジョッキだと思います。今までのウイスキーはロックグラスでちびちび飲むものでしたが、大きなジョッキだと、アルコールを濃くせずレモンでさっぱりと飲みやすく、ごくごく飲めます。このジョッキによって世の中が変わってきていると言えます。
 また、今年の夏ぐらいまでの予定で、日経新聞に連載されている伊集院静先生の「琥珀の夢」という小説や、NHKの「マッサン」があった時も、あれも一つの契機でウイスキーがもう一度脚光を浴びることになりました。本当においしいウイスキーをおいしくゆっくり飲んでいただけるという商品と場所を大事にしていきたいと思っています。
 福高OBの大隅さんがノーベル賞を受賞されました。修猷ではなく残念でしたが心広く福高にエールをお送りしたいと思います。その大隅先生はお酒が大好きで、以前、別の大きな賞を取られた時にサントリーでオリジナルウイスキーをつくられました。商品名は「Lessons from Yeast」(酵母からの教え)で、それを皆さんに配られました。そういう関係もあり、われわれサントリーとしても大隅先生の今回の快挙は大変喜ばしく思っています。

■商品開発に「勝利の方程式」は存在しない

 勝利の方程式は存在しませんが、「失敗しないためのルール」とか、「うまくいくためのカン所」というのはあります。それはシミュレーションだと思います。「成功しよう」ではなく、「失敗確率を下げる」ことに重きを置くとそれはイコール「成功確率が上がる」ということです。成功しようではなくて、失敗確率を下げるほうに重きを置くとマーケティングも面白さが出てきます。
 例えば、将棋の名人は小さい時からポケットの中に詰将棋をいくつも持っていて、それを毎日見て考えているそうです。それは毎日シミュレーションをしていることになります。肺動脈が専門の天才外科医の伊達先生は、手術の前日に、手術の本番の格好をしてガーゼを肺に見立ててシミュレーションするそうです。そうすると実際の手術で圧倒的にスピードと確実性が高まるのだそうです。これも究極のシミュレーションです。ノーベル賞を受賞された山中先生は「実験こそが、全ての発見の原点」とおっしゃっています。実験はシミュレーションそのものです。それから店舗デザイナーの片山さんという方は、客の目線になるために100分の1の店舗模型でシミュレーションをされるそうです。シミュレーションを突き詰めてやる人が最高のアウトプットができるのだと思います。
 もう一つは、今一生懸命にやろうとしていることですが、「失敗を楽しく語ろう!」ということです。「失敗はノウハウの宝庫」です。これは頭では分かるのですが、失敗を堂々ときちんと説明することは難しいです。キヤノンの御手洗さんも「もし失敗から学ぶことができれば、失敗は成功である」とおっしゃっています。
 宣伝とか商品開発を36年間やってきましたが、われわれの商品はお酒とか日々の生活を楽しくするカテゴリーですので、戦略的楽観主義がいいと考えています。ただの楽観主義ではなく戦略的楽観主義です。千出して三つしか残らない千三つの業界ですので失敗は多いですが、その中で残ったものに対しては、皆で励まし合って前向きに明るく戦略的に育てていきたいと思っています。
 商品開発でのネーミングとかデザインの一つ一つは真剣につくり上げ組み上げていっています。それは修猷の運動会の4段タワーのような積み上げ方の感覚です。商品を見ることがありましたら、そのことを思っていただけたら幸いです。ご清聴ありがとうございました。

■質疑応答

○田原 もしあればですが、山田さんご自身の失敗談と、そこから学んだ気付きを教えてください。

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○山田 過去に失敗したものを集めてまとめたことがあります。私の失敗で一番多いのは思い込みです。途中のシミュレーションでちょっと感じた改良の余地を、思い込みですっと消していくことがあります。これが多いですね。
 それから時代に早すぎた遅すぎたということがあります。一番いいのはお客様より0.5歩先を行くことですが、これはとても難しくて永遠の課題です。

○-- 私が住んでいる二子玉川近くのスーパーには角瓶もだるまも置いてありません。それなのにジョニーウオーカーの赤と黒が随分安い値段であったりします。製造会社として小売価格のコントロールはできないのでしょうか。

○山田 小売価格は私どもの範疇(はんちゅう)ではありません。しかしそこはけしからんです。角瓶とオールドはぜひ置いてほしいと思います。

○吉住 新しい価値観をつくる、今までの価値観を変えるというのは難しいことだろうと思います。例えば「金曜はプレモルの日」という価値観を定着させるために心掛けられたポイントがあれば教えてください。

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○山田 人間の消費行動の価値観を変えるのはなかなか難しいことです。価値観を変えるという考えではないですね。楽しく愉快な便利なことを提案して、それが目に留まってそれを実感してもらえれば定着します。そうでなければわれわれの提案の工夫が足りないということだと思っています。ポイントはお客さんに喜んでもらう部分を前面に出すことだと思います。
 もう一つは時間です。消費行動とかお客様のライフスタイルは1年とか2年では絶対に変わりません。気持ちやベクトルを次の人たちに託してやっていくというロングレンジで考えるしかないと思っています。

○日高 平成12年卒の日高です。私はプレモルの広告を見て広告に携わりたいと思い、今、広告会社で働いています。サントリーの広告の神髄、何を一番大切にされているか、消費者に一味違った印象を与える要因を教えてください。

○山田 最近は面白いCMも出てきていて少し負けているという感覚もありますが、サントリーの宣伝がいいと思ってくださる部分があるとすると、「おもろいか」という一言に尽きると思います。大阪弁の「おもろいか」というのは、東京弁や博多弁に直すのは難しい独特の言い回しだと思います。どこに面白さをつくるかを皆で必死にやっています。この広告を挙げると認知がどれだけ上がるとかいうマーケティング的なことではなく、とにかく「おもろいか」「おもろくないか」というのがいつも根っこにあるのだと思います。

■大須賀会長あいさつ

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○大須賀 日本のビール競争は大変だと思います。長く商品開発に携わっておられそうで、マーケティングのノウハウを分かりやすく総論的にお話しいただき参考になりました。ものを売るためにはお客様の心をつかまなくてはいけません。その一番の焦点は、音とリズムと色だそうです。皆さんもそれぞれのお仕事や生活の中で何かのヒントがあったのではないかと思います。もしかしたら子供や孫の名前を付けるときの参考になるかもしれないと思いました。これからブランドマーケティングの世界はまだまだ進化をしていくと思います。さらに精進されてぜひ大ヒット商品をつくられるように期待しています。

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