第478回二木会

日時 平成12年9月14日dai477s_2.jpg (9586 バイト)

講演テーマ
「映画の話」

注:講師をお願いしていた原田義明さんのお母さまがご逝去されたため、急きょ、
S52年卒芳田秀明さんに講師をお願いしました。

芳田秀明さん
1977年修猷館高校卒業
1983年早稲田政経卒業。にっかつ撮影所に就職。助監督
2000年9月15日第一回監督作品「スイート・スイート・ゴースト」が封切り(シ
ネ・リーブル池袋)。

今回の「スイート・スイート・ゴースト」は単館ロードショーと呼ばれ、社運を掛
けた大作(全館ロードショー)ではありません。そのため宣伝費がほとんどなく、
自分でテレビやラジオ、新聞、雑誌に“記事”として取り上げてもらえるように、
プレゼント用のTシャツ(写真)をつくったりしてマスコミ各社を回っています。
 16年間も助監督で下積み生活を経験した後の、生まれ故郷でロケをした作品な
ので、「以前から温めていた、自分史を描いた作品」と思われる方も少なくないの
ですが、実際はそうではありません。
 ほとんどの映画は脚本家や監督の履歴によって内容や演出が決まるわけではあり
ません。
今回は3つの作品をビデオで見ていただきながら、その作品に込められたメッセー
ジや、映画の作られ方をご紹介します。
チャップリンが歯車に巻き込まれるシーンで有名な「モダンタイムス」はご欄にな
った方も多いと思います。
この作品はチャップリンにとって初めてのトーキー映画です。1926年頃からトーキ
ー映画が登場してきましたが、チャップリンは「演技が変わる」として、無声映画
を撮り続けていました。そして初めてトーキーを手がけたこの作品で、メッセージ
を送っているように思えます。
 チャップリンが工場をクビになった後に勤めたカフェで少女と恋に落ちますが、
経営者から「ここで働き続けたいのならショーで歌え!」と命じられます。“頭が
あまり良くない”設定のチャップリンはカフスボタンに歌詞を書き、カンニングを
試みますが、歌いだす前の踊りの際にカフスを飛ばしてしまいます。なんとか歌い
はじめたものの、意味不明の歌詞となってしまいます。トーキー映画として撮影さ
れたにも関わらず、このシーンの直前までは無声映画で進行し、チャップリンの歌
で初めてトーキーとなるのです。この劇中での「歌え!」という命令は、監督とし
てのチャップリンに「トーキーを撮れ」と言っているのに等しいと思います。私は
、トーキーとの戦いを続けてきたチャップリンのトーキー第一作であるこの「モダ
ンタイムス」を見たときに、このシーンで涙を流したことが印象に残っています。

 さて、監督や脚本家は、映画の冒頭で、非日常的な「出来事」を起こそうとしま
す。オーソンウェルズの「黒い罠」は今までの全ての映画を対象とした投票で常に
一位を争う優れた作品ですが、その冒頭は4分近くが途中で撮影を中断しないワン
カットです。このシーンは町中の情景を全て作られたセットで撮影し、俳優の動き
、カメラの位置など全てが計算しつくされ、映画史に残るといってよいと思います
。爆弾とキスという非日常の世界に引き込むための「出来事」を非常にうまく演出
しています。                                                 
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 監督は、一つ一つのシーンに相対したとき、様々なことを考え、セリフはもちろ
ん、小道具、その配置などにこだわりを持ちます。私の映画を見ていただいて、さ
さいなシーンでも「もしかしたら、あいつはこんなことを考えているのでは」と想
いながら見ていたいただけたら幸いです。

以上

 



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