<日時> H18年9月14日(木) <場所>学士会館203号室
<参加人数> 77名
<テーマ> 『ニッポンの司法制度』〜法曹界の現状と行動の指針〜
<講師>
弁護士 羽田野 節夫 氏(昭和42年卒)
<運営/進行> S.55年卒(GOGO会)間中 紳介
<内容>
○
講師紹介(司会及び 園田 真一
氏(S.42年卒))
(1)略歴 S.23年6月生まれ。 S.42年3月:修猷館卒業(柔道部/スタミナ部、3年次:運動会/赤ブロック長) S.48年4月:九州大学法学部卒業 S.53年10月:司法試験合格 S.56年4月:福岡県弁護士会登録 H.10年度 :福岡県弁護士会 副会長 H18年4月:福岡県弁護士会 会長 (2)趣味、家族など スポーツ(柔道(4段)、軟式野球、ヨット、スキー、登山、映画・芝居鑑賞、海外旅行 3人娘(全て修猷館卒業もしくは在校生) |
羽田野講師 講師紹介 園田様
○ (卒業後)修猷館に関わるトピックス
(1) 修猷館高校校舎移転の反対活動(S.61年〜62年頃)
「長き伝統と先輩方の一つ一つの思いがこの地に宿る」の信念で、移転阻止運動展開。移転阻止に成功。
(2) 福岡ドーム場外馬券場設置反対運動(H13年11月〜H14年5月)
(修猷館を含む)近隣の学校、生徒への影響を懸念。
「義を見てせざるは勇なきなり」。小中高PTA12万人の署名運動を
展開。市長の反対表明を引き出し、運動成功。
○ 高齢者、障害者の支援活動
(1) H12年4月1日より
@ 介護保険制度導入
A 成年後見制度*1
いわゆる「認知症」となった成人に対し、従来は「強制入院」によりリスク管理。「個人の尊厳」を守るために、代理人、後見人による支援により、家族や地域の中でともに生活できる環境を整えることを指向。
(2) H15年4月1日より
@ 身心障害者に附する支援費制度
(刑事事件における)「当番弁護士制度」に対し、お年寄り、認知症に対する
支援が不足と判断し、福岡県弁護士会がH12年9月より「福祉の当番弁護士制度」をスタートさせ、全国に展開中。
いずれも、行政、医師会、社会福祉士、弁護士会との連携が必要。
背景には、「弱者に対し、危険な社会になってきている懸念」が強く存在。
(ex:オレオレ詐欺などの一連の犯罪、ライブドア事件(人の心が買えるか?)等)
○精神的事情または身体的事情の為に、財産管理や身上看護を的確にできなくなった成年者を対象に、必要かつ相当な援助を行う仕組み。 ○当該制度を支える理念 ・自己決定の尊重と自己決定の支援 ・残存能力の活用 ・ノーマライゼーション (障害のある人も家庭や地域で通常の生活ができるような 社会をつくるという理念) ○当該制度には、以下2つの制度により成り立っている。 @
任意後見制度(精神上の障害により、自分の判断能力が十分機能 しない状態に陥る前に、自ら手当てをして任意後見人を選定し、 同人との間の契約により、援助の内容を予め決めておく制度) A
法定後見制度(精神上の障害により、自分の判断能力が不十分な 成年者に対し、家庭裁判所が審判により保護者を決定し、保護者が 財産管理や身上看護について本人を保護する制度 |
○ 法曹界の現状
(1) 弁護士自治と司法権の独立
@弁護士会の存在意義
・「弁護士会」は強制加入。この制度により、「弁護士自治」が守られ、
司法権の独立を制度的に保障している。
・「規制緩和」を旗印に掲げ、強制加入制度をくずす動きがあるが、
これは、司法権の独立を脅かす動き。
A「弁護士の警察庁等に対する依頼者密告制度」*2法案
・市民の適切な弁護権を奪う(安心して弁護士に相談できず、弁護士に対する
社会や市民の信頼が損なわれる)として、立法化阻止を訴え。
|
*2:「弁護士の警察庁等に対する依頼者密告制度」(ゲートキーパー制度) 犯罪収益の資金洗浄など違法性の疑いのある依頼者の資金や不動産の 取引について、警察へ通報するよう義務付ける制度。弁護士を「門番」に見立て、「ゲートキーパー制度」と呼ばれる。政府は07年での国会での法案提出を 目指している。 |
B「共謀罪」法案
・法律の「行為主義」に反する、危険な法案と認識。
(2) 実践段階に入った司法改革
@
弁護士「大量増員時代」到来
現状:約22,000人の弁護士。うち10,000人は東京に集中。
H18年3月:法科大学院第一期生(約2,500人)卒業。
12月からの1年半の司法修習を経て、大量増員へ。
(H19年:3,000人合格体制へ)
A 日本司法支援センター設立(H18年4月)/被疑者国選制の実現(同10月)
重大事件に限り、逮捕拘留後に、被疑者段階(起訴前)から国選弁護人がつく
制度。従来は起訴後に国選弁護人がついたが、逮捕から起訴に至る過程での「自白強要」を防ぐことを目的に設定。
(もともと「当番弁護士制度」もH2年12月より福岡県弁護士会がはじめ、全国に広がった制度。今回の被疑者国選弁護制は、「当番弁護士制度」の成果。)
B 裁判員制度(H21年5月までに実施)と法教育の充実
短期3年以上の重大犯罪につき、市民から無作為抽出された6人の裁判員と、3人の職業裁判官でつくる合議体による裁判。いわゆる「陪審員制度」と異なり、有罪/無罪判定に加え、量刑まで裁判員が判断。
法教育は「自ら考え、自らの責任で行動する」自立した大人を作るために必要。
(原理、原則を認識させる)
○ 行動の基本指針について
(1) 問題意識
・昨今の不祥事事件(ライブドア、オレオレ詐欺等)が意味するものは?
←「弱者に対し、危険な社会になってきている懸念」あり。
・国家、企業、個人の基本的行動指針が問われている(失われていないか?)。
(2) 国家の基本的指針(←基本的指針は『日本国憲法』)
(3) 企業の基本的指針(ex:某商事会社の社是/綱領)
@「所期奉公」、A「処事光明」B「立業貿易」
←「公に奉じる」思想
(4) 弁護士の行動指針
・弁護士法第一条(弁護士の使命)
「弁護士は、基本的人権の擁護と社会正義の実現を目指す」
(5) 私(個人)の行動指針
@ 座右の銘『積誠動人』
(孟子「至誠、人をも動かす」と同義。
修猷館恩師:小柳陽太郎先生より頂戴した言葉)
A 修猷館時代に培われた組織原理
・組織が人を動かす。組織の自主性を尊重。
・リーダーたるもの「率先垂範」が必要。
「教えてやって、してみせて、ほめてやらねば、人は動かず」
(米沢藩主/上杉鷹山)
・修猷館時代(運動会/ブロック長などの経験から)多くの教訓を得て、
現在に生きている。
(質疑応答)
Q:国選弁護人の選定要件は?
A:(体力の要る刑事事件を除けば)順番で選定。(刑事事件は一定年齢以下を選定)
Q:弁護士を訴える場合は、どうすればよいか?
A:他の弁護士に相談を。(但し同じ弁護士会所属同士は実質「やりづらい」のが本音。)
<その他連絡事項>
○ 二木会運営
・ 今回よりS.55年卒(GOGO会)が幹事を担当。
・ 運営指針について説明。拍手をもって了承されました。
○ 同窓会会員の年次を越えた「縦のつながり」の強化を運営の指針としたい。 ○ 具体的には、以下の3点を試みたい。 @「ニッポンの今」を年間テーマとして設定し、今、身の回りにおこり つつある各課題について、全体感を捕らえ、解説して頂くこととしたい。 A
幅広い年次から講師を募り、年1回程度は(修猷館OB以外の)外部講師を招聘することとしたい。 B
講演前の時間を活用して、参加者の皆様にご発言を頂き、会員相互の 交流を促進する機会としたい。 |
○ 福岡市東京事務所からの報告(S.53卒 判田 宝樹 氏)
・2018年五輪招致についてのご報告と招致活動支援に対する謝意。
○ 次回(第533回)二木会のお知らせ
・ 2006年10月12日
・ テーマ :ニッポンの地球環境問題〜「環境科学の役割と地球の今後」
・ 講師 :東京大学名誉教授、国連大学顧問 不破 敬一郎 先輩 (S.18年卒)
以 上
|
|||||||||||||||||||
|