<第502回二木会>

国際協力のあり方

講師 国際協力事業団 理事 吉永國光氏(昭和39年卒)

2003年4月10日(木)  午後6時から 講演
                     7時から 懇親パーティ
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   「吉永國光氏の講演」              「80名を超える盛況の講演会場」    「懇親パーティでの藤吉会長ご挨拶」「24名の参加があった平成15年の新卒生」

<JICA(国際協力事業団、本年10月より独立行政法人国際協力機構)とは>

 国際協力は、途上国の福祉と生活の安定に貢献し、開発を通じて地球規模の問題の解決に役立つことを目的とします。主なものにODA(政府開発援助)がありますが、その総額は、99年度153億ドルから2001年度96.8億ドルと大幅に減少しています。このODAの8割以上を占めているのが、二国間(バイ)と呼ばれるもので、贈与(33%)と貸付(50%)があります。この贈与の中に、GNP1445ドル以下の国を対象とする「無償資金協力」(主としてアジアついでアフリカ、有償では対応しにくい分野での援助)と「技術協力」があります。
 JICAはこの「無償資金援助」の実施促進業務及び「技術協力」を担当しており、とくに以下のような「技術協力」がJICAの活動の中心です。

   (1)途上国からの研修員の受け入れ     
        2001年度20992人で、その65.2%がアジアからです。

   (2)専門家(次官・大使クラス及び製造業の専門的分野の人材)の派遣
        2001年度3277人で、同じくアジアが61.9%です。その内訳は 行政19%農林水産15% 保健医療18% となっています。

   (3)機材供与
 

 感染症対策など保健医療協力、農業開発、教育、職業訓練、下水、森林維持管理の分野で(1)(2)(3)を組み合わせた技術協力プロジェクトとして行っています。
     

   (4)開発調査
        円借款につながるfeasibility studyを基本に、 地下水、地形図、鉱物資源についての調査を行います。

   (5)青年海外協力隊  
        最も知名度の高い活動で、現在2432人が、アジア(28%)アフリカ(24%)中南米(27%)に赴き、教育訓練38% 保健医療16% 農林水産15% 行政15% の分野で活動しています。

   (6)シニア海外ボランティア   
        協力隊シニア版で、現在600人のうち6人にひとりが女性です。40歳から69歳までが対象で平均年齢は58歳です。

 (5)(6)については、往復の旅費・滞在費はもとより仕事に必要な費用のほかに休職期間中の給与が保証されるという厚遇もあって若い人の応募者も多いのですが、健康診断で不合格になるケースの中に若い人の生活習慣病や体力の低下が最近目立ちます。
 またこうした厚遇の反面、未整備な土地や乗り物に起因する交通事故や強盗殺人、病気などにより年間6,7人(多いときは2桁)の殉職者が出ているのも事実です。アフリカ奥地からパリ・ロンドンの病院へ飛行機で搬送する業者サービスを契約するなどしていますが、間に合わないこともあります。

   (7)国際緊急援助隊   地震発生時などに要請に応じて出動します。 
 新聞報道以前ですが、ひと月ほど前にベトナムからの要請を受けて、SARS感染者に対応するため厚生労働省の医師を派遣しました。この頃すでに専門家によっては著しく高い感染力を警告する人もいました。SARSはこの感染力のため搬送サービスの対象から外されています。

 
 二国間協力には、この他インフラを中心とした有償資金協力(円借款)がありJBIC(国際協力銀行)が実施面を担当しています。金額は96年時から半減しており、ODA全体の額の減少につながっています。


<国際協力の問題点>

 とくに無償援助においては、対象国が援助を自国の自立に役立てることに結びつけていないケースも多く、自立へのインセンティヴを持ってもらうことが課題となっています。


<EBRD(欧州復興開発銀行)>

 ロンドンでは3年間EBRDの仕事に携わりました。これはODAが出資している国際機関のひとつで、欧州の旧共産国を対象として社会主義経済から資本主義経済への移行を助けることを目的としています。市場原理によって価格が決定される仕組みを徹底し、年金制度や社会保険制度の解体、また社会主義国の特徴である国営金融業など国営企業の民営化を行います。民営化する際、EBRDが出資者のひとつとして入ることによって欧米からの投資を促すなどの活動を行っています。こうした改革の結果、経済成長率は大幅ダウンし極度なインフレになり失業率も上昇しましたが、これを潜り抜けて95年以降成長に転じました。ハンガリーなどのように、社会保険制度に替わる仕組みを、民間の力で作ることに成功した国もあります。世界不況の現在、中東欧の国々は、むしろ堅調を維持しています。      
 イラク戦争支持40ヶ国の半数以上が中東欧ですが、近年まで独裁の圧政に苦しんだ自国の歴史と重なるからという見方もできます。経済構造が民営化している度合いの点で、資本主義の中でも最も資本主義的といわれるこれらの国々に日本は遥かに及んでおりません。 
社会主義的制度を改革して経済再建に成功した英国に手厳しく酷評される日本は、これらの国々を教訓とするところもあるのかもしれません。
 本日は有難うございました

 

 

 

第502回 二木会のお知らせ

国際協力のあり方
 
〜異なる2つのアプローチ〜

ようやく春の日差しが現れるようになったこの頃ですが、館友の皆様におかれましては、ますますお元気にご活躍のことと存じます。

4月の二木会の講師には、国際協力事業団(JICA)理事の吉永國光さん(昭和39年修猷館卒業)をお迎えします。吉永さんは、日銀、大蔵省の要職を経て、平成11年から3年間、欧州復興開発銀行(EBRD)の日本代表理事を務められ、昨年JICA理事に就任されました。吉永さんより、JICAの"経済援助"的側面と、EBRDの"経済構造改革・民営化"という2つの側面から、国際協力のあり方についてお話を伺います。

また今回の二木会は、今年修猷館を卒業して上京する新入会員を迎える会でもあります。通常の例会とは異なり、午後6時から講演会、午後7時からは立食による懇親会となっておりますので、ご承知おきください。

多くの館友の皆様のご参加をお待ちしています。
 尚、出席のご返事は4月7日(月)必着でお願いします。

東京修猷会 会 長 藤吉 敏生(S26)
      幹事長 渡辺 俊介(S38)


テーマ 国際協力のあり方 〜異なる2つのアプローチ〜    
講 師 吉 永 國 光 氏(昭和39年卒)
            国際協力事業団(JICA)理事
日   2003年4月10日(木)  午後6時から 講演
                     
7時から 懇親パーティ
場   学士会館 千代田区神田錦町3−28
           電話 03-3292-5931
  地下鉄東西線      「竹 橋」下車5分
  半蔵門線・新宿線・三田線「神保町」下車3分
会   3,000円
  学生及び70歳以上の方は1,500円