<第501回二木会>
都市回帰とニューシニアの住い方
講師 株式会社東急住生活研究所 望月久美子氏(昭和44年卒)
2003年3月13日(木) 学士会館 午後6時から 食事
7時から 講演
「望月氏の紹介をされる 伊佐裕氏(昭和44年卒)」
ここ十数年の間に地価の下落によって土地神話は完全に崩壊しました。不動産及び住宅市場は市場原理が普通にはたらく市場になる一方、需要側では少子高齢化・小家族化が進行して、結果として住いの選択肢の多様化につながりました。
<供給側の変化> 〜 急速な都心回帰
首都圏(1都3県)の住宅市場では、マンション新規供給及び売上がバブル崩壊後の94年を境として、それ以前と以後の平均比較で二倍以上の伸びを示しています。単価が下がったための売上増もありますが、一戸あたりの面積が大きくなるなど、永住に耐えうる居住性能の質の向上が特徴的です。供給戸数で見ると、首都圏の中でも東京都の割合が年々増加し2002年に至って半数を超えました。また都内でも、特に都心部・副都心の割合が93年との比較で約二倍になっています。この傾向は、マンションなら都心から10km圏内、建売で20km圏内の物件供給が大幅に増加したこと、また需要側の意識としても移動時間ドアツードアで60分圏内が希望の中心になったことからもうかがえます。
ここ数年、超高層・大型物件の供給件数は都市の様相を変えるほど増加していますが、競争の激化の中で商品の進化が見られます。専有部分の充実や基本性能の向上を超えたハード面での進化(高耐久性、市場や社会の要請にもとづいた新しいスタンダードの確立)やスケールメリットを生かした共用部分の質向上(コミュニティー機能など集住文化の形成、「癒し」など)にも発展しています。都市居住に求められるものが顕在化していっているとも言えるでしょう。
<需要側の変化> 〜 住宅双六の変化
需要側の大きな構造変化としては、少子高齢化による小家族の増加があります。単身あるいは夫婦のみの世帯割合が2020年には半数を超えることが予想されています。平成10年建設省住宅局の調査では、かなり多くの高齢者が夫婦あるいは単身で広い家に住み続けている実態が明らかになりました。従来「住宅双六」という考え方の中で持ち家取得を「上がり」とし、それ以後の転居を考えないことがその背景にあると思われます。しかしその一方で、例えば汐留の超高層マンション購入者の約半数が比較的高齢であったり、ある地域の住宅地に自然発生的に高齢者が集まってきたりといった「第2の上がり」の予兆とも言える現象が、企業の予想しないところで起こってきているのは注目すべきことです。
平成14年住文化研究協議会の調査は、これからの老後の住まい方の多様性を示唆しています。都心での生活を希望する人や(都心を含め)複数の住いを希望する人もみられます。65歳になったら「独居」あるいは「非血縁者との同居」を希望する人の割合が特に女性で3割を占めるほか、現在の住居以外で最晩年を過ごしたいと考えている人も全体の6割に上ります。
さらに資産としての住いに対する考え方も柔軟化しつつあります。リバースモゲージに近い考え方ですが、所有住宅を賃貸しして自分は利便性の高い賃貸住宅やケアつきマンションで暮らすという選択肢も受け容れられてきています。こうした変化はそれを公的に支える制度が整うことにより、拡大期の家族に広い住宅を供給できるという点で社会の良質ストック形成につながります。
平成13年の内閣府調査では、大都市の高齢者の約8割が健康状態良好と答えています。つまり潜在的ニーズをもつ層があるわけですが、それが行動に結びつくためには何らかの具体像を提供する必要があります。そこで注目されるのが団塊世代です。これから高齢期に入っていく団塊世代は、バブル崩壊に直撃されておらず住宅への意欲がそれほど減退していないこと、またこれまでも数を武器に新しい価値を次々創出してきたことなどから、将来フロンティアとして新しい生活を作り出す可能性が期待されています。
<都市の再生>
企業は市場メカニズムを駆動力としていい商品づくりを通して社会に貢献する意識を持ち、また住み手もライフステージに合わせた住まい方など意識改革することを通して、都市が空間的・社会的に変革されていくことが期待されます。そしてそれを支える公的役割が整備され、従来型の都市再開発とは異なる「真の都市再生」へと結びつけていけたらと考えています。
本日は有難うございました。
第501回 二木会のお知らせ
都心回帰とニューシニアの住まい方
春寒の候、例年になく寒い日が続いておりますが、館友の皆様におかれましては、ますますお元気にご活躍のことと存じます。
平成初期以降のいわゆるバブルの崩壊は、地価の下落に伴う住宅の都心回帰をもたらしました。さらに、高齢化や小家族化の進展がいっそうそれを加速させています。しかし急速な都市回帰は皮肉にも改めて都市の脆弱さを露呈させることとなり、新世紀を迎えて、都市はまさに本来の再生の道を迫られているといえます。
3月の二木会の講師には、株式会社 東急住生活研究所・取締役副所長の望月久美子さん(昭和44年修猷館卒業)をお迎えします。望月さんは、都市におけるシニア層の動きが最も象徴的で、かつ都市再生へ向けての起爆剤のひとつになると見ています。本来の都市が持つべき生活機能を回復させるために、都市に帰ってきたシニア層がいかなる役割を果たすのかについて、お話を伺います。
多くの館友の皆様のご参加をお待ちしています。
尚、出席のご返事は 3月10日(月)必着でお願いします。
東京修猷会 会 長 藤吉 敏生(S26)
幹事長 渡辺 俊介(S38)
記
1 | テーマ | 都心回帰とニューシニアの住まい方 |
2 | 講 師 | 望 月 久美子 氏(昭和44年卒) 株式会社 東急住生活研究所・取締役副所長 |
3 | 日 時 | 2003年3月13日(木) 午後6時から 食事 7時から 講演 |
4 | 場 所 | 学士会館 千代田区神田錦町3−28 電話 03-3292-5931 地下鉄東西線 「竹 橋」下車5分 半蔵門線・新宿線・三田線「神保町」下車3分 |
5 | 会 費 | 3,000円(講演のみの方は1,500円) 学生及び70歳以上の方は1,500円(講演のみの方は無料) |