第488回二木会

 小泉・田中内閣の行方

講 師:土肥 隆一 氏 (昭和33年卒)
     衆議院議員(民主党)前衆議院外務委員会委員長

      

日 時:2001年10月11日(木)
場  所;神田学士会館 

  1. はじめに

   
国会では、改革無くして成長無しのスローガンを掲げる小泉内閣のもと、今日から衆議院でテロ新法の審議が始まっています。ニューヨークで起きたテロは許されないことであり、日本としても意思表示が必要です。それがテロ新法というわけです。民主党はこれに反対はしていませんが、アフガニスタンにはアフガン戦争で旧ソ連が残した武器、弾薬、戦車など残っていること、避難民の中に多数の兵士がいることなどを考えると、自衛隊派遣は武器の使用を含め現実に即したものにすることが重要であり、武器の使用には修正は必要であると考えています。その後の基本計画についても事前承認か、事後承認かの問題があります。これはシビリアンコントロールの意味も考えて、事前であるべきと考えます。

  また、アフガニスタンで一番必要な援助は、何かを考えるとき、17年にわたってパキスタンで医療活動を行っているペシャワール会(NGO)の中村哲先生(福岡高校出身)の提案は参考になります。これから酷寒の時期を迎えるので食料や毛布、テントなどが是非必要ということです。このままでは人口の一割は死亡するということです。私どもは何とかして、1000万円を集めて早く送りたいと考えています。

 

2.外務委員会委員長時の出来事

 外務委員会の委員長であった時期に外務省の人事問題、法案審議中の大臣発言、機密費、水増し問題そしてDA疑惑がテレビや新聞紙上を賑わしました。これらの問題は外務省族議員として豪腕を振るっていた元田中派の鈴木宗男衆議院議員と田中真紀子大臣との確執に起因しているようです。

委員会はテレビ各社の途切れることの無い収録が行われるという異常な状況で行われ、田中大臣を悩ませていました。 外務省人事は、従来年齢、入省年や語学の系列により決定され、このときの問題となったロシア課長人事は河野前大臣により既に承認されており、変更することは不可能な事態でした。大論争は田中大臣が小寺ロシア課長のロンドン留学を停止し、日本に呼び戻したことにより問題が大きくなったのです。委員会で鈴木議員はこの事実をとりあげ、大臣の失態を浮き上がらせようとしたのです。委員長である私は、鈴木発言を止めることは許されません。委員会での議員の発言は最大限に尊重されるのです。それが国民は許されないようでした。委員会の運営について国民は知りませんから、いかにも私が鈴木氏の発言を積極的に許しているように見えたのです。私は多くの批判のメール(120〜130通)を受け、電話、ファックスを頂戴しました。匿名の、やや悪趣味なメールの使用方法は考えるべきです。
 この論争は鈴木議員が次回の委員会において、前回の積み残しを無視して、北方領土返還(2島か、4島か)問題へ質問を変えることにより終了しました。この時期には、田中大臣からの電話内容や外国の大臣との会談内容が漏洩して新聞紙上に堂々と出るのです。鈴木発言をめぐっては、私と田中大臣との間まで取りざたされるなどの事態が生じたのです。つまり鈴木発言に何らかの制約をかける依頼です。私は委員会において田中大臣に適切な答弁をするように、また行政府と立法府との相互不可侵、大臣発言の漏洩への説明を求めて3回警告したものです。鈴木氏の追及は突然中止されます。後日田中大臣がコーヒー豆をもって鈴木議員を会館事務所を訪問し、鈴木、田中対決は決着したのです。手打ちです。

   
DAについて申しますと、これは外務省にとっての大きな武器であって、これ以外に有効な外交手段を持っていないと考えていますが、一方で利権の温床にもなるのです。ケニヤのある発電所を視察しましたが、繰り返し私が申したのは「フェア」ということばでした。ケニアのダム建設に関わる鈴木氏への疑惑を解決すべく鈴木議員自らの提案での視察でした。利権など分かろうはずはありません。しかし、あまりにも貧しい国々への援助は当事国およびその関係者に利権が常に付きまとうことは避けようがないのでしょうか。


3.小泉内閣の行方

  
今までもずっといたのに、特異な政治家として登場した小泉純一郎氏、彼が率いる内閣に田中大臣が加わり、今までにない新しい味を出す小泉氏に驚きと敬意すら持たせる登場です。現在彼は大胆な構造改革を進めようとしていますが、ニューヨークでのテロ発生により、改革は難しくなっています。小泉改革を実行すると必ずデフレになります。最悪の経済状態になるのです。病んでいるわが国の経済改革は温浴療法にも似て、ゆっくり時間をかけてやるべきです。まず株と土地の問題です。

小泉内閣の前途は険しいですが、自民党内に彼に代わるだけの候補がいないということはこの党にとって最大の泣きどころです。野党にとってもポスト小泉を狙う候補者がいないのが現状です。人材は内に育ちつつあるのか、どこか隠れた人材があるのか、政界はしばらく宝探しの状態が続くのではないでしょうか。

    以上
 

       


 

 

<第488回二木会のお知らせ>

 小泉・田中内閣の行方

 

  暑い夏もやっと終わったようですが、館友の皆様におかれましてはお元気にお過ごしのことと存じます。

 完全失業率が5%を超える中で構造改革を今後どう進めていくのか、小泉内閣の舵取りへの期待と不安が高まりつつあります。一方で、懸案が山積みの日本の外交ですが、日本の国益を踏まえながら世界の平和と安定の確保にどのように貢献できるのか、田中外務大臣がいかにして国民の理解と信頼を得てこの難しい局面を乗り切っていくのかも非常に気になるところです。

 10月の講師には衆議院議員(民主党)の土肥隆一さんをお迎えします。土肥さんは、1990年に衆議院議員に当選された後、12年間の間、厚生委員会(現在は厚生・労働委員会)等で年金、医療、福祉、公衆衛生等を中心にお仕事をされてきました。そして、現在は衆議院外務委員会委員長という重職に就かれ、新たな課題に取り組まれています。田中外務大臣の登場もあり「日本の外交」がかってないほどに注目される中で、土肥委員長の御活躍をTV等でご覧になられた館友の方も多いかと思います。

 今回は、田中外務大臣と日本外交の行方について、そして改革断行内閣として注目を集めている小泉内閣の今後について、外務委員長のお立場ならではの、我々からはなかなか見ることのできない世界のお話をお聞かせ頂く予定です。

 多くの館友の皆様のご参加をお待ちしています。
 尚、出席のご返事は10月5日必着でお願いします。

           東京修猷会 会 長 藤吉 敏生(S26)
                   幹事長 渡辺 俊介(S38)

1.テーマ:小泉・田中内閣の行方

2.講 師:土肥 隆一 氏 (昭和33年卒)
      衆議院議員(民主党)衆議院外務委員会委員長

3.日 時:2001年10月11日(木) 午後6時から 食事
                     7時から 講演