第484回二木会
2001年4月12日(木) 於 学士会館
講師 崎山 裕子 氏 早稲田大学学生部就職課長
テーマ 「最近の就職事情 〜新大学生へのエールをこめて」
略歴
1973年 修猷館高校卒業
1977年 早稲田大学卒業
1977年より早稲田大学職員
はじめに
今年、大学に入学された皆さん、おめでとうございます。就職課は学生の就職
活動を支援するところです。最近は「キャリアセンター」の名称で一年生に対して
も将来を考えるサポートをしたり、国公立大学にも設置されるようになりましたの
で、ぜひ自分の大学の就職課を積極的に利用してください。
1】最近の就職環境の特徴
学生の就職活動の厳しさを表す一つに求人倍率があります。これは求人数を民
間企業就職希望者数で割ったもので、過去最高は91年のバブル就職期で、2.86
倍でした。その当時は企業の姿勢は「ぜひ、来てください」で、面接に行くとすぐ
に握手をされ、その後は遊園地などでの「研修」で拘束され、他社に行かないよう
にもてなされたと聞いています。しかし昨年、2000年3月卒の求人倍率は0.99倍
で調査開始以来最低の倍率となりました。
1)就職活動の時期が早まった
97年に就職協定(大学、企業、官庁間での紳士協定)が破棄されてからどん
どん企業の採用活動が早期化してきました。現在では3年生が終わる春休みに企業
セミナーが本格化し、4月になると内定が出始めます。
2)インターネットでの就職活動の功罪
これだけ早期化したのは、企業が早くより良い人材を確保するためと言ってよ
いと思います。またインターネットでの就職活動が行われるようになったことも大
きく影響しています。96年に早稲田大の就職課では学生用のパソコンを設置しま
したが、当時は企業情報を得るためだけに使っていました。現在では申し込みはも
ちろん、一次選考までインターネットで行われる例もあり、企業のインターネット
利用は凄まじい勢いで進んでいます。
インターネットでの就職活動は、学生にとっても企業の公開情報をだれでも入
手できるなどのメリットもあります。しかし「就職活動を充分にやっている」とい
う錯覚に陥るというデメリットもあります。インターネットでどれだけ企業の情報
を得ても、それはだれでもが入手できるものであり、就職活動にとっては「生きた
情報」とは言えません。その企業の雰囲気や仕事のやり甲斐などは、入手した情報
に基づいてOBやOGを訪問し、直接聞くことによってこそ判断ができるのです。
インターネットでの就職活動は「楽」ですが、それだけにとどまっていれば自
分が満足できる企業に入ることはできません。実際に足を運び、自分の耳で聞き、
肌で感じないと分からないことは多いのです。「楽したら、損」と思ってください。
2】学生の就職意識の変化
1)就社から就職へ
ディスコ(株)の調査によると、就職活動中の学生の意識は、定年まで一つの
会社に勤めたいは30%、転職でキャリアアップしていきたいは40%、ある程度
勤めたら独立・起業したいが15%となっています。業種や会社で選ぶのではなく
、職種で選ぶ傾向が強くなっています。これは最近のベンチャーブームや企業の倒
産などが影響していると思います。
2)入社3年以内の離職率が3割
「若い者は辛抱が足りない」との意見もありますが、企業も学生も焦って決め
るので、ミスマッチがおこっていると思います。学生の立場から見れば、変化の時
代と言われながらも職場は旧態然としており、がっかりしてしまうという実態もあ
ります。しかし、3年以上は頑張ってほしいと思います。
3)フリーターの増加
フリーターとは15〜34歳のアルバイトやパートの職についている人を言い
ます。2000年版の『労働白書』では大卒のうち23%がフリーターだそうです。や
りたいことのために積極的にフリーターを選んでいる人もいますが、自分がどんな
職に就きたいのかが分からないままにフリーターとなっている人が多いようです。
しばらくフリーターでやりたいことを探すのもよいという考え方は危険です。
フリーターから正社員になるのはなかなか難しいと言ってよいのです。親も安易に
フリーターを容認しないでほしいと思います。
3】企業が求める人材
1)即戦力
以前は企業から「なるべく白紙の状態で送り出してください。入社してからの
教育で我が社に合う人材にしますから」と言われていました。最近では「能力を持
った人材を送り出してください」と言われます。最終面接で落とされるのも当たり
前になってきました。経営トップが判断する企業が増えているようです。
2)目的意識がはっきりしている
昔は「元気で頑張ります。言われたら何でもやります」という人材が好まれて
いましたが、最近の面接では「何ができますか? 我が社で何をやりたいのですか
?」と目的意識がはっきりしているかが問われます。
3)コミュニケーション能力、自主・自立性、チャレンジ精神
コミュニケーション能力は就職の流行語大賞と言ってもいいくらいに多くの採
用担当者から聞きます。面接で言葉のキャッチボールができない学生が増えている
そうです。自分の得意分野だととうとうと話すけれど、知らないことや興味がない
ことは話をすることができないのだそうです。
仕事は人と人とのつながりの中で遂行していくものです。システムエンジニア
や開発職といった職種でも人との意志疎通ができなければ満足な仕事はできません
。周囲に気を配り、コミュニケーションをとることができる人が求められています
。
4)語学とパソコンは「ツール=道具」として重要
語学力やパソコンを使える能力は今後どのような仕事をする上でも必要ですが
、あくまでそれはツールとしての役割です。語学力やパソコンを使ってどのような
仕事をするのかが求められています。
5】私自身の経験からのアドバイス
1)学生の皆さんへ
私が接するが学生の多くは3、4年生ですが、人によって大きな差があります。
話を聞いてみるとどのような学生生活を送ってきたかで、その差が出てきている
ようです。
・学生時代をボーっと過ごすのはもったいない! 4年間は短い。
・専門の知識を教えてくれる授業は面白く、先生方とのふれあいは貴重な経験!
友達をつくることを大切にしながらも、ぜひ先生方とつきあってみてください。
・得意分野を持とう! すべてに優を取るのもよいけれど、どれか一つだけは15
0点、200点を取れる得意分野を持ってほしい。
・大学の施設、行事は有効に活用しよう! 図書館、パソコンルーム、有名人の講
演会など。
・学生時代は勉強に励みながらも、大いに遊ぼう! 勉強だけに偏っては骨太の人
間にはなれません。
・目標は高く持って挑戦しよう! 失敗をしないような低い目標ではなく、失敗を
繰り返して成長することを楽しんでほしい。
・社会への関心を持とう! インターンシップ、ボランティア、新聞、アルバイト
etc 社会とそして様々な人とふれることで大きな人間になれます。
2)ご父母の皆さんへ
大学生は大人になる訓練期間です。大人扱いをして自立を支援してください。
また、ご自分のころとは確実に時代は変わっています。名のある企業に就職するの
が最善ではありません。これから伸びる企業は現在はまったく無名ということもあ
ります。
3)OB、OGの皆さんへ
学生は世代が違う人とふれることによって大きく成長します。人との出会いを
どれだけ経験するかがカギとなります。後輩のためにはなんでもしますよね!?
後輩を思う気持ちをぜひ、形にしてください。
おわりに
学生時代はたった4年しかないけれど、人生を決める大きな4年間です。ぜひ
様々な経験をして骨太の人間になっていただきたいと思っています。そして、自分
を見つめ、どのように生きていきたいのかを考え、自分に適した職に就かれること
を願っています。
以 上