第481回二木会

2001年1月11日(木) 於 学士会館
講師  柳 邦宏 氏 日立製作所
略歴 
昭和49年 修猷館卒業
昭和55年 九州工業大学大学院卒業
現在は日立製作所情報サービス事業部で双方向サービスの開発に携わり、デジタル
衛星放送の双方向サービスセンター責任者を務めている。
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テーマ 「デジタル衛星放送で変わるテレビ〜見るテレビから使うテレビへ」 

1)はじめに

  21世紀はデジタルの時代と言われています。パソコン、携帯電話に続き、ど
の家庭にもあるテレビがデジタル化され、家庭で様々なサービスを享受できる時代
が始まりつつあります。今回はデジタル放送の概要と今後の展望についてご紹介し
ます。

2000年12月にBSデジタル衛星放送が始まった。
2003年には地上波でも東京、関西、名古屋でデジタル放送が始まる予定(放送アン
テナの位置は決まっていないが)。
2010年にはアナログ放送が廃止される予定である。2010年には全世帯の半数にはデ
ジタルテレビ受信機が普及する。これは数年後には市場からアナログテレビが消え
るからである。

  テレビが家庭に置ける情報端末として重要な役割を担うと考えられている。

2)デジタル化で何が変わるか

その1  画像が高品質になる。ゴーストが消える。
  現在のアナログ放送では画面にある走査線480本を240本ずつ交互に送信してい
る。この走査線数が480本から最大1125本に増加するため、非常に鮮明な画像が実現
できる。音声についても同様に鮮明な音質になる。またゴースト(ビルなどで反射
した電波を二重に受信するからおこる)は、デジタル化によって、電波がずれて到
着しても「同じ電波」と認識するのでゴーストが消える。

その2  多チャンネル化。CSは200チャンネル。CS110は80チャンネル。BS
は映像系だけでも8社がスタートしている。2003年からは地上波も始まる。  多
チャンネル化によって起きるのは番組の不足と広告の奪い合い。
  いかに、視聴者にとって魅力的なコンテンツを用意できるかが、放送局の生き
残りを決める。

その3  高機能。マルチメディア化。
  映像に付属して、より詳しい「資料」を提供できる。海中を泳ぐ鮫の映像に付
属して、その鮫の生態の特徴をデータで提供することができる。また、映像ではな
くデータそのものを主とする放送も始まる。ショッピングや株式の情報提供などを
想像していただきたい。
  電子番組表も特徴として上げられる。画面上で、新聞のテレビ欄と同じように
放送予定を見ることができる。しかも検索機能があるので、特定のタレントが出る
番組だけを見つけ、予約することも可能。
  

3)双方向サービスの例

リクエスト&エントリー 
  カタログ請求や懸賞への応募など。
ショッピング
  送られてくるカタログから商品を選択して購入する意志を伝えることができる
(電話線につなぐ必要はあるが)。パソコンのインターネットショッピングと同じ
であるが、大きな違いはキーボードを必要としない点である。「手軽に意思伝達で
きる」ことは大きなポイントである。
チケット&リザーブ
  コンサートや交通、宿泊など。旅番組で紹介された旅館をその場で予約できる

ホームバンキング
  自宅で振り込み操作ができる。銀行へ足を運ぶ必要がなくなる。ただし、当然
のことながら現金がテレビから出てくることはない。
ファンド、マネージメント  株式投資、その他の金融商品の動向を、自分が必要
な情報だけを見ながら、決済を行うことができる。
リサーチ
  インターネットと同じように自分が必要な情報を検索して得ることができる。

4)デジタル放送を楽しむため必要なものは?

1.受信機
  チューナー(別名セットトップボックス。10万円前後)を購入するか、あるい
は一体型受信機(チューナー内蔵テレビ。30〜40万円)を購入する。
2.BSアンテナ
  従来のBSアンテナで可。
無料の放送(民放)を見るだけならここまででOK。

有料放送(WOWWOW、NHK)を見るためには
3.BCAS(ビーキャス・限定受信センター)への登録。無料。
  チューナー(もしくは一体型受信機)に付属しているハガキにて登録する。

これに加え、双方向サービスを享受するためには
4.電話線への接続。
  受信機のモデムを電話線に接続。なお、番組によっては放送局のクラブ会員へ
の登録(同梱ハガキ)が必要。

5)デジタル放送は大きなビジネスチャンス

  双方向サービスによってテレビがマーケティングツールに変わった。情報の
「提供」だけではなく、視聴者が意志を伝達できるので、様々な「ビジネス」が成
立する。大きなビジネスチャンスの到来である。
  現在の地上波放送局に加え、商社、メーカー、広告代理店、出版社、銀行など
が「放送局」に参入(協同出資で新会社を設立)。日立製作所もBSデジタル放送
局である、BS朝日、デジタルキャストインターナショナルに出資した。新しい情
報チャネルとして注目している。

 各家庭に同じ情報を届けることができる。パソコンがなくてもテレビとリモコン
だけで双方向に参加できるため、老若男女問わずターゲットとすることが可能。地
上波までデジタルに変わるので、全世帯を対象とした新たなマーケティングチャネ
ルとして大きな注目を集めている。

  しかし、ハードは整いつつあるが、ソフト(情報・サービス)はこれから。ど
のような情報・サービスを提供するかによって「儲けの度合い」が違ってくる。各
社の知恵比べといえる。


          以   上     


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