第477回二木会

日時 平成12年7月13日dai477s_2.jpg (9586 バイト)

講師 廣川 智子 
1973年修猷館高校卒業。
1978年早稲田大学第一文学部卒業。
金融情報サービス、出版、貿易関係の日米の企業で、役員秘書、翻訳、マーケティング等に従事。
1994年株式会社フィスコ設立時よりマーケティング・マネージャー。

テーマ「変わる株式市場と個人投資家」

「変わる」というより「進化する」の方が適切と思えるほど、最近の個人投資家を巡る環境は改善した。
それはひとえにインターネットによる株式取引が現実のものになったからだ。この6月にはインターネッ
トを利用した証券会社、通称オンライン証券会社の口座が100万を突破した。また年末までには、個人
の株式売買代金のうちインターネット取引が2割を占めると見られ、まさに驚異的な伸びである。

インターネット取引がこのように爆発的に増加したのは次のような背景がある。
@ インターネットそのものの普及。
A99年10月に実施された金融ビッグバンの一環としての株式売買手数料の自由化。
Bこれに伴い、営業店や営業員を持たずコストを大幅に抑えられるオンライン証券が手数料のディスカウ
ント競争を行った。
C同じく金融ビッグバンの一環として証券会社が免許制から登録制へ規制緩和され、異業種参入が盛んに
なり活性化された。

ここでフィスコの業務について簡単に説明する。
金融機関のディーリング・ルームなどには必須の情報インフラとして、刻々と変わる株価、為替、債券な
どの価格情報を中心に、さまざまな金融情報を提供する金融情報端末があり、通信社として有名なロイタ
ー、日経系のクイック、外資系のブルームバーグやブリッジという会社が提供している。彼らは「金融メ
ディア」とか「情報ベンダー」と呼ばれる。フィスコはこれらの金融情報インフラの上に載せて貰う形で、
株式、為替、債券の市場分析情報、つまりコンテンツだけをオプショナル・サービスとして提供する。こ
のようなビジネスは「サードベンダー」と呼ばれ、欧米では珍しくないが、まだ日本ではきわめて少ない
業態。証券業界を熟知した人間による、バイアスのかからない、中立・独立のコメントを提供することで
金融機関の第一線のハイエンドの顧客に評価され、代表的な金融機関200社以上に利用されている。
ここ2年ほどインターネットの急速な普及とともに、インターネットによる個人向けビジネスを行ってい
る企業から、専門家向けサービスである程度の評価を得た弊社へ、個人向けのサービスも提供してほしい
との引き合いが急増した。

例えば、インターネットのポータルサイトとして最大手のヤフー・ジャパンからはヤフー営業開始直後か
ら引き合いがあり、同サイトへ株式と為替のニュースを提供してきた。オンライン証券にも、日興ビーン
ズ証券(日興證券のインターネット取引専業会社)、DLJディレクトsfg証券(外資系DLJ中心に
住友銀行、さくら銀行、大和証券等が出資したインターネット取引専業会社)はじめ数社へ情報提供中。
また、日本最大のプロバイダー、ニフティから金融専門サイトのプロデュースを要請され、2000年3
月にファイナンス・アット・ニフティを立ち上げた。

インターネット利用の株式取引には馴染みがない方がまだ多いと思うので、百聞は一見にしかず、本日は
実際のサイトを一緒にご覧頂く。(この後、上記サイトのデモンストレーションを行う。)

個人投資家としての体験から「インターネット前」と「インターネット後」の変化を簡単に述べる。
@ 手軽さ・気軽さ
インターネット前は、株式投資を始めるためには証券会社の営業店に出向き、営業マンに相対して口座
開設しなければならず面倒、しかも強引な営業をされないかという警戒心や抵抗感があった。インター
ネット後は、オンライン証券で口座開設の申し込みフォームに記入し、クリックすると申込書が届き、
必要書類を返送すれば1週間ほどでユーザーIDとパスワードが届く。指定の口座に入金し、サイトにID
とパスワードを入力すれば、その時点から売買が可能。電話勧誘などもない。
A投資情報
●株価…インターネット前は、新聞の株式欄利用、証券会社の店頭の株価ボードを見る、などの方法し
かなく、リアルタイムの株価を個人が知る手段は限られていた。インターネット後の現在では、
ポータルサイトは20分遅れの株価を無料で提供。オンライン証券の口座保有者はリアルタイ
ムで見ることが可能。チャートもきわめて専門的なものまで無料で見ることができる。
●企業情報…インターネット前は会社四季報などで見る程度だった。証券マンからある銘柄を推奨され
ても確認、検証する術がなかった。インターネット後の最近は、企業の意識変革もあり、
自社サイトで業績や新製品情報などの情報開示が進んだ。四季報程度ならポータルサイト
にも掲載されている。オンライン証券の口座保有者へのサービスには、かなり専門的な情
報(著名な格付機関スタンダード&プアーズの格付情報や、日経4紙の掲載記事を検索で
きる日経テレコンなど)もあり、プロフェッショナルの使用にも十分耐えられる内容。
B さまざまな分析ツールや銘柄選定サポート機能
投資情報だけではなく、投資の意思決定サポートのための多様なツールが搭載されており、銘柄選択に便
利なばかりでなく、株式投資をしなくともビジネスに役立つ機能も多い。
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振り返ると、ここ1、2年でいかに個人投資家を巡る環境が画期的な変化・進化を遂げたか、感動さえ覚え
る。株式市場という同じフィールドで競うならば、プロフェッショナルもアマチュアも公平に同じ条件・
同じ判断材料を手にして競うのが当然。しかし、従来はややもすると個人投資家の取引は証券会社主導で
行われていた。インターネット取引の普及により、株式投資の最も基本的部分で、ようやく日本の個人投
資家の環境が整ってきたといえる。まさに株式投資の自由化・民主化、個人投資家主権の時代の始まりで
あり、大変喜ばしい。フィスコ情報提供三原則のひとつに「機会均等が成立する“透明度の高い公平な金
融市場”の形成に貢献していく」という項があるが、今後ともますますこの実現に向けて努力していきた
い。
以上

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