第466回 二木会
開催日:平成11年4月8日(木)
開催場所:神田学士会館 320号
講師:長野 倬士(ながの たかし)
タイトル:「ものの見かた・考え方」
講師ご経歴:昭和10年生まれ。昭和29年修猷館高校卒業。東京大学教養学部国
際関係論科卒業後、国鉄入社。運賃、設備投資、労働問題等の業務に従事。国鉄改
革時には、国鉄ならびに国鉄清算事業団共済事務局長として鉄道共済年金問題を担
当。現在、(株)国際観光会館副社長。東京修猷会副会長。著書に「大学で何を学
ぶか」(1995.9 プレジデント社)がある。
今回の二木会は、毎年4月の恒例となっている通り、ことし修猷館高校を卒業した
後輩たちの歓迎会を兼ねたもので、講演の後には立食パーティも用意され、ビール
なども準備されました。
長野講師の話は、まず大学での理科系と文科系の学問の違いから始まりました。
「大学に入学する際に、何を専攻するか決めるとき、たとえば理科系であれば『医
者になろう、電気や土木、建築を極めてその道のプロになろう。』などと目的がは
っきりしている。しかし、文科系に進んだ学生は『よい友達を作ろう、学卒の学歴
があったほうがいいかな。』などに傾く。そして、人文科学や社会科学は人間のこ
とや人間の関係のことを学問する科学であるにもかかわらず、理科系の学生に比べ
て、より人間のことがわかって卒業するとも言い切れない。これは大いに問題であ
る。」という、社会科学や人文科学などの文科系に入学した学生達にとっては、い
きなり辛口のお話からスタートしました。
次に、学問についての考え方を示されました。
「学問とは、『万古不滅の真理』を追求するものではなく、世の中のことや事実を
『説明する道具』であると思う。『天動説』と『地動説』とは、どちらが真理とい
うわけではなく、単に『地動説』の方が天体の動きをわかりやすく明快に説明でき
るだけのことである。これは、ニュートンの『万有引力の法則』も同じで、言って
みれば自然を観察し研究した結果の一つの仮説であるし、アインシュタインの『相
対性理論』も同様である。」
「科学が発達するまでは、全てのものが神の領域にあった。自然科学の発達は、仮
説と対策(証明)によって説明されるサイクルの繰り返しで発展して来た。一方
、人文科学や社会科学も、人間についての、社会についての仮説を立てるべきであ
る。それによって、人間の扱い方が、人間の集団の御し方がわかってくるはずであ
る。」
そして、いよいよ話は本題に入ってきます。
「人文科学は過去の歴史や学説の講義が多すぎる。いったい人間はどうして動くの
か?『人間はエゴイズムで動く。』と仮説する。動物は種族保存の法則で動いてい
る。これを人間でいうとエゴイズムということになる。」この後、「アメリカの南
北戦争の原因は、奴隷開放といったヒューマニズムからではなく、北部産業資本と
南部農業資本との労働力争奪戦であったので、黒人はその後も決して幸せに成れて
はいない。」と説明されたり、「学校で教えられたことを『真理』として信じ込む
のは勉強の本質ではない。わかり易く説明できるのが勉強である。」と話され
、「歴史の勉強は年号を憶えることではなく、歴史観が重要である」として、『マ
ルクスの歴史観』についての話をされました。
また、エゴイズムによる行動原理仮説による説明として、「平将門の乱から鎌倉幕
府の成立や建武の中興」を例にして、歴史上の事件の説明をされ、「法社会学」の
観点からエゴイズム仮説の説明をされました。
最後に、「制度やシステムを考えるとき『エゴイズム』を考慮しないと上手くいか
ない。」ことや、反対に「『エゴイズム』を利用して世の中の仕組みがよりよく動
くことを考える。」ことについて例題を交えて話されました。
結論として、「センスは固有のものではあるが、正しく学問すると、ものを見るセ
ンスが磨かれる。」と話されて、今回の講義は終了しました。
その後、新入会員の歓迎会として立食パーティが開かれ、、野上会長のご挨拶や
、新入会員の自己紹介、大学4年生の就職のお願いなど盛りだくさんの内容となり
会は盛り上がりました。最後は、新入会員の「焼き肉食わせろ。」の要求に
、S43年卒を中心とした先輩方が夜の神保町に焼き肉屋ならぬ赤提灯を探して
、消えていきました。(流石に修猷の先輩は太っ腹?)
文責:しっとーや会東京支部(昭和48年卒)西村 元延