<第513回 二木会>

生産から消費までの流れのなかで食卓の安全を考える
〜らでぃっしゅぼーやの目指すもの〜

らでぃっしゅぼーや株式会社 代表取締役社長 緒方 大助 氏(S54年卒)

高校時代3年間、この時期は良く勉強したなあという時期はありませんでした。唯一、3年生の運動会で黄色ブロックのタンブリング長をしていた時に、恩師の小柳陽太郎先生に「緒方はなかなか人の動かし方が上手いな」と言っていただきました。その一言の記憶だけでここまでやって来ました。

(1)日本と世界の有機農業に関する動き
「らでぃっしゅぼーや」は、今は法律が変わって「有機野菜」とは呼べなくなってしまいましたが、いわゆる有機野菜を栽培して宅配する会社です。

有機農業とは、農薬、化学肥料、除草剤などの化学合成物質に頼らない農業です。そのきっかけは1962年にレイチェル・カーソンが書いた「沈黙の春」という本です。この本で初めて化学物質の危険性が指摘され始めました。

それを受けて日本では朝日新聞に1974年から有吉佐和子さんが「複合汚染」を連載し始めました。

1960年代前半までは、基本的には日本の農業は有機農法で、どこにでも肥溜めがありました。その後化学肥料が加速度的に使われ始めました。

日本では有機野菜イコール安全な食べ物という認識ですが、EUでの認識は若干違っていて、農業環境政策として、有機農業によって農地を化学物質で汚染しないという、いわゆる環境対策としての切り口の方がポピュラーなのです。有機野菜を政府が高く買ってくれるのではなくて、有機農業に取り組む農家に対しては認証が与えられ、国から直接補助金が出ます。この20年間でEUでは有機農地の耕作面積が約10倍に成長しました。イタリア、オーストリアで全耕地面積の約9%、北欧で7%、ドイツ、英国では5%です。

(2)各国の一人一年当たり野菜消費量

一番野菜を食べているのは韓国、スペイン、フランスと来て、次は驚かれるかも知れませんがアメリカである。アメリカは先進国の中では四番目に野菜を食べている。日本はアメリカの次の次です。

(3)日本とアメリカにおける年間野菜消費量
日本は平成8年にアメリカに抜かれ、今ではアメリカよりも野菜を食べていない。アメリカの野菜消費量が伸びたのは、ファイブ・ア・デイという「一日に五品目の野菜を必ず食べる運動」が広まったためです。

果物の消費量は、2001年には既に日本は世界平均よりは勝っているが、アジアの平均よりも日本人は果物を食べていない。果物と野菜はほとんどの種類の癌に何らかの効果があると言われています。

(4)らでぃっしゅぼーやの歴史
らでぃっしゅぼーやは、1988年に当時の環境NPO「日本リサイクル運動市民の会」が母体となってその事業部門として設立された会社です。日本で初めて大規模なフリーマーケットを開催し、物を大切にすることをスローガンにしました。現在では、有機的な農産物がひいては地球環境の保全に繋がると言う基本理念に基づいた企業活動を行なっています。

(5)らでぃっしゅぼーや事業の紹介
当時はグループ購入であった有機野菜等の食品を日本で初めて個別宅配し始めました。
契約産地・農家からの有機・無農薬・減農薬の野菜を詰めあわせてセットBOXにして
届けます。サイズで7種類、卵を入れると14種類あります。肉やその他の食品も扱っています。

(6)らでぃっしゅぼーやの商品とサービス
同業他社とは商品が違います。 例えば、らでぃっしゅぼーやの豚は一年中豚舎には入れず放牧で飼っています。その為、らでぃっしゅぼーやの豚の尻尾はちゃんと豚の尻尾の形をしています。豚舎で飼うと、豚はストレスから他の豚の尻尾を噛みます。噛まれた豚はそこから病気になったりするので普通は豚舎に入れる前に尻尾を切ってしまうのです。

鶏も平飼いで飼っています。鶏舎で飼うところは、鶏同士がくちばしで他の鶏の尻を突いて怪我させないように、くちばしを焼きコテで焼いてしまいます。すると鶏はえさを上手に食べられなくなり、痩せてしまいます。そのため栄養価の高い合成飼料を与えるためコストが上がるという悪循環に陥ってしまいます。らでぃっしゅぼーやの鶏は鶏舎で飼うよりも生産効率は落ちますが、このようなことがありません。


(7)「食卓の安全」を守る独自の基準と生産管理体制
食品を製造する際に、不必要な添加物は加えない、農薬は化学肥料に頼らない、環境負荷を改善する、ないしは助長しない。食べ物としての美味しさを追求する。食べる人・使う人が安心して使えること。これらを担保する三つの体制が商品の生産基準、管理体制、情報開示です。

農産五原則
  (原則一)除草剤は使わない
  (原則二)薬剤による土壌殺菌は行わない
  (原則三)堆肥を主体とした土作りをやった上で作付けを行う
  (原則四)基本的に半農薬である(必要最低限ぎりぎりの農薬しか使わない、禁止農薬は使わない、使った農薬は記録する。)
  (原則五)自家食用と出荷用を分けない


栽培管理の基準として各農家に所持農薬一覧を提出してもらっています。また、抜き打ちで各農地の土壌検査に行き、作物の農薬残留検査も行っています。

農家は「自分のやり方が一番」と言う方々が多く、井の中の蛙にならない為に、生産者の技術を高め合う目的で生産者の技術交流会も行っています。

(8)「食卓の安全」を作る顔の見えるコミュニケーション
商品に使われた農薬の種類、使用量、生産者の名前、住所等の情報開示を行っています。また年間全国で50回の会員を対象とした産地訪問会を実施しています。

(9)らでぃっしゅぼーやの環境への取り組み
エコキッチン倶楽部に約1000名の会員が加入。各会員の家庭で出た生ゴミを生ゴミ処理機で乾燥資源にしてもらったものを、らでぃっしゅぼーやの宅配用の車で回収して肥料化して生産者の畑に返しています。

「子供のころからそれぞれの作物の成り立ちや、口に入る前の作物の姿を知ることが重要」と言う企業理念に基づいて、キッズキッチンをひと月に10回くらい開催し、生産者に来てもらって子供たちに作物がどうやって作られたかを教えてもらっている。

(10)らでぃっしゅぼーやの目指すもの
現在我々は約10万種類を越える化学物質に囲まれて暮らしており、毎日毎日500種類の化学物質が新たに生み出されていると言われています。そんな中で、当社はできるだけ不必要な化学物質は少なくとも食べ物の中には入れないでおこうとビジネスを展開しています。

しかしながら、食べ物が安全であること、安心できること、トレーサビリティがしっかりしていることだけでは不十分だと考えています。食べ物とは単元的に評価されるべきものではないと思います。日本人が自国の料理を食べなくなっていることについても心配しています。

食べ物というものは肉体を形づくるだけでなく、人格形成を行う上で大きな役割を負っていると考えております。

我々は、生産者の方たちには「是非強くて逞しい健やかな野菜を作ってください、それが
必ず心身ともに強くて健やかな人を作るから」とお願いしております。
らでぃっしゅぼーやという社名は「らでぃっしゅ」=二十日大根の強い生命力と「ぼーや」=次世代を意味しています。これからも次世代に少しでも多くの強く、健やかな生命を引き継いでいくことを、弊社の社会使命と考えています。

以上。


   講師を紹介する同期の松尾 隆広 氏              講師の緒方 大助 氏


第513回 二木会のお知らせ

生産から消費までの流れの中で食卓の安全を考える」
〜らでぃっしゅぼーやの目指すもの〜

 若鮎踊る初夏を迎え、館友の皆様におかれましては益々ご活躍のこととお慶び申し上げます。
 さて、7月の二木会は、らでぃっしゅぼーや(株)代表取締役社長 緒方大助さん(昭和54年修猷館卒業)を講師にお迎えし、「生産から消費までの流れの中で食卓の安全を考える〜らでぃっしゅぼーやの目指すもの〜」をテーマにお話しいただきます。

 緒方さんは福岡大学商学部を中退された後、平成5年にキューサイ(株)に入社、開発部次長などを歴任され、平成12年からは社内ベンチャーにより環ネットワーク(株)(現らでぃっしゅぼーや(株))代表取締役社長にご就任されました。
 らでぃっしゅぼーやは無・低農薬野菜、無添加食品、環境に配慮した日用品(エコグッズ)などの会員制宅配業でいまやNO.1の地位を築いている会社です。ご講演では、安全な食品やエコグッズの提供を通して、消費者の健康増進や次世代に残すべき良好な環境の保全への取り組みなど、緒方さんが会社設立時から目指してきていることを興味深くお話頂けるものと思います。


 多くの館友の皆様がご参加下さいますよう、心よりお待ちしております。
 尚、出席のご返事は7月5日(月)必着でお願いします。

東京修猷会 会 長 藤吉 敏生(S26)
      幹事長 渡辺 俊介(S38)


テーマ  生産から消費までの流れの中で食卓の安全を考える
〜らでぃっしゅぼーやの目指すもの〜
講 師  緒方大助 氏 (昭和54年卒)
 
らでぃっしゅぼーや株式会社 代表取締役社長
日    2004年 7月 8日(木)  午後6時から 食事
                   
  7時から 講演
 食事を申し込まれた方は、遅くとも6時30分までにお越しください。
場    学士会館 千代田区神田錦町3−28
           電話 03-3292-5931
  地下鉄東西線        
「竹 橋」下車5分
  半蔵門線・新宿線・三田線「神保町」下車3分
会    3,000円(講演のみの方は1,500円)
 学生及び70歳以上の方は1,500円(講演のみの方は無料)