<第507回 二木会>

航空行政の課題

講師 昭和41年卒 洞 駿 氏 (国土交通省国土交通審議官)

  
        講師を紹介する安田 修之助 氏                講師の洞 氏


         講演後に奥様と

1.国内及び国際航空輸送の現状

航空輸送は、(1)我が国の国際交流の拡大、観光立国の推進 (2)地域間交流の拡大、地域の活性化(3)都市の再生(4)我が国の経済社会の活性化・国際競争力の向上等に大きく寄与するインフラである。
今年はライト兄弟が初めて空を飛んでから100年、そして民間航空が再開されて51年である。H14年度の国内航空旅客数の合計は9666万人で、そのうち6割(5949万人)は羽田空港を利用している。十年後のH24年度には国内航空旅客数の合計は1億2700万人に増えると予測されている。

世界的に見て一番大きい航空市場は北米しかもアメリカの国内である。次に大きいのはアジアで、3番目は欧州である。地域間の旅客流動で大きいのは北米と欧州間が4000万人、次に大きいのは欧州と日本の間で1600万人でそのうちの四分の一が日本人である。
1999年から2010年までの航空需要予測で、今後全世界で4.5%需要が伸びると予測され、アジアは7.0%という高い需要の成長が予測されている。

このような需要の伸びを受け入れる空港や航空機の整備が必要。ただし、国際航空旅客数の動向には弱点があり、世界が平和でないと伸びない。H13年9月のアメリカ同時多発テロ以降、国際航空旅客が激減した。

2.航空サービス分野の規制緩和と今後の展望

昔は航空事業は路線ごとに免許が必要であったが、三年ほど前に事業ごとの許可制に移行した。その結果、エアドゥー、スカイマーク、スカイネットアジアなどの新規航空会社が参入し価格競争が激化して来た。この十数年間で平均で3割くらい運賃が下がった。
その結果国際的に見ても日本の正規の航空運賃水準は下がってきた。旅客数は増えているが今後の見通しは、羽田空港の利用枠が満杯になりそうなので不透明である。厳しい経済状況で各航空会社は地方路線をカットしたり便数を減らしている。H9年頃に約300路線もあった路線数のうち2割ぐらいがカットされた。カットした分は羽田を起点とした高収入路線で増収を図ろうとしているが、これも羽田の枠に余裕がないからである。

国内各航空会社は、旅客数は増えても運賃の値下げ競争で収入は増えず、経営は厳しい。
国際航空市場で、コスト競争力のあるアジアの航空会社が太平洋路線に参入して来て躍進している。また、ユナイテッド航空等破綻企業が合理化により競争力のある航空会社として復活しつつある。つまり大競争時代へ移っている。

H13年9月の米国のテロの影響で国内航空会社3社(JAL, JAS, ANA)合計で約1700億円の減収であった。 H15年のイラク戦争とSARSの影響でJAL + JASとANAの2社で本年度は合計約2000億円の減収が見込まれる。

3.空港の整備・運営について

大都市圏拠点空港の整備
中部国際空港、新東京国際空港(成田)、関西国際空港(二期工事)、東京国際空港(羽田)。

羽田再拡張事業の必要性
羽田の容量は既に満杯なので、羽田再拡張事業により国内航空のボトルネックを解消する必要あり。問題は約1兆円近い財源が必要なこと。「設計と施工を一括で依頼することでコスト削減狙う」や「造った後の維持管理費込みの契約にする」などの工夫を考慮中。

我が国と世界の主要都市圏における滑走路の整備状況
韓国の仁川空港などは安い整備コストと国の大規模投資で巨大空港を整備し、滑走路の能力に対して現状の利用状況にかなり余裕があるのに対して、日本は滑走路の能力一杯まで使って、それで立ち行かなくなったら次の滑走路の整備に着手するということを繰り返して来た。これでいいのだろうか。

国際空港の利用料金
日本の滑走路の着陸料は、国際水準と比べると高いが、旅客一人当たりの空港使用料金等の合計は欧米並みか、それよりも安い。

国内の一般空港の整備
日本の空港は米軍と共用のものも含めて95箇所ある。
離島を除き、地方空港新設を抑制。真に必要かつ有用なもののみを事業化。
静岡県の新空港整備については約1900億円必要。静岡県の人口は約400万人で全国10位。背景には、羽田空港に出るにせよ名古屋空港に出るにせよ2時間以上かかり不便であるため、静岡県民自身が静岡県内の新空港の整備を望んでいる。

空港整備特別会計の歳入・歳出
公共工事における空港整備費の割合は1.91%と極めて低いので、もっと割合を上げてもらうよう努力し、少しずつ伸びている。

福岡空港の概要
非常に便利な空港。2800mの滑走路が一本で、H14年度には年間190万人以上が利用し、国内52路線、国際21路線が乗り入れている。すでに限界に近づいている。

新福岡空港が話題となっているが、本年度から国で何時になったらパンクするのか、新北九州空港や佐賀空港と役割分担できないかなどを調査開始。
福岡の今後の発展のひとつの要因なので、問題認識を持つ必要あり。

以上




第507回 二木会のお知らせ

航空行政の課題

 

 街路樹の風情夕べの虫の声にも、秋の深まりを感じる時候となりましたが、館友の皆様におかれましては益々ご活躍のことと存じます。
 さて、11月の二木会は、本年7月に国土交通省国土交通審議官に就任された、洞 駿さん(昭和41年修猷館卒業)を講師にお迎えし、「航空行政の課題」をテーマにお話しいただきます。


 20世紀後半の国際交流の活発化は、あらゆる分野においてグローバリゼーションと呼ばれるうねりを巻き起こしました。このグローバリゼーションを支える重要な柱の一つが、地球規模の交通ネットワークの構築・拡充であることは論を待ちません。洞さんは昭和46年に東京大学法学部をご卒業と同時に運輸省に入省され、航空局管理部航空事業課長などを経て、平成14年8月には国土交通省航空局長を歴任されるなど、現職に至るまで航空行政に深く関わってこられました。新東京国際空港(成田)の拡張、羽田空港の沖合展開、中部国際空港の建設などが進められる中、わが国の航空政策はどのような課題を抱えているのか、またどのような方向に向かうべきなのか、興味深いお話をうかがえることと思います。

 多くの館友の皆様のご参加をお待ちしています。
尚、出席のご返事は11月10日(月)必着でお願いします。


東京修猷会 会 長 藤吉 敏生(S26)
      幹事長 渡辺 俊介(S38)


テーマ  航空行政の課題    
講 師  洞 駿 氏 (昭和41年卒)
   
国土交通省 国土交通審議官
日    2003年 11月13日(木)  午後6時から 食事
                 
  7時から 講演
場    学士会館 千代田区神田錦町3−28
           電話 03-3292-5931
  地下鉄東西線        
「竹 橋」下車5分
  半蔵門線・新宿線・三田線「神保町」下車3分
会    3,000円(講演のみの方は1,500円)
 学生及び70歳以上の方は1,500円(講演のみの方は無料)






次回の二木会に多くの館友のみなさまのご参加を心よりお待ちしております。